僕たちは、幼馴染をやめた (Page 5)

「気持ちいい?」

 耳元で、拓海が囁くように言った。僕は顔を赤く染めながら、こくこくと頷く。
恥ずかしさで、どうにかなってしまいそうだった。

「……ハル、ごめん、ちょっと我慢して」

「えっ?あ、ちょっ……!」

 拓海は僕に覆いかぶさるようにして、腰の動きを速める。
突きあげられる度に、僕の口からは甲高い声がこぼれた。

「たっくん、ダメだっ……て、あぁ」

 内側からの刺激に、じわじわとした快感が身を包む。僕自身も、かなり限界だった。
 思わず拓海の背中を強く抱き、拓海の腹部と自分のモノが擦れる快感を求めている自分がいた。

「ハル、……ハル。好き。好きだったんだ」

「たっくん、あ、あっ、おれ……俺も……」

 互いの身体を強く抱きながら、どこかぎこちなく、それでいて満たされていた。
初めてのセックスは強い快感を得るには少し遠かったけれど、僕たちはそれでもよかった。
 何度も互いの肌に触れて、自身の弱い部分をすり合わせ、そうして、深く繋がれたことに大きな喜びを得たのだった。

*****

 ようやく退院の日を迎える前日。拓海がいつものように病室へ入ってきた。
 他愛もない雑談に花を咲かせていると、拓海が言った。

 「そうそう、ハル。これ、退院祝い」

 どこからか取り出されたプレゼントボックス。
 帰宅したら開けて欲しいとのことだった。

 久しぶりの山手線は、平日の昼間ということもあってなのか、空いていた。
僕はリュックサックに入りきらなかった退院祝いを小脇に抱えて、少しだけ憂鬱を覚える。
 せっかく久しぶりに再会したというのに、あれだけお互いを求めたというのに、退院の挨拶時、拓海は顔を見せなかったのだ。

「どういうつもりなんだろ。っていうか、俺達ってなんだったんだ?」

 思わず呟いた言葉は、最寄駅を知らせるアナウンスの音声でかき消された。

 久しぶりの我が家。1Rの狭い部屋に着いた時、僕はちょっとした解放感を覚えていた。
身体を患っていたのだから、当たり前のことではあるが、入院生活も楽ではない。

 そういえば、と。拓海から貰った包みを開けてみる。中には可愛らしいぬいぐるみが入っていた。

 男が男に渡すものではないだろう、と思ったその瞬間、一緒に小さなメッセージカードが入っていることに気づく。
内容は文字ではなく、電話番号のようだった。

 「――そういうことか」

 僕はなんとなく、拓海の意図が読めたような気がした。
要するに、もう少し自己主張しろということなのだろう。

思わぬ夏の始まりに、僕は早速スマートフォンを手にとったのであった。

Fin.

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