画商は画商の夢を見る ~好敵手は恋人?~ (Page 2)

「大方、俺に先を越された誰かが流した噂だろう。特に父は敵を作るのが得意だ――」

「トモヨシ」

「!」

いきなりぐいっと肩を掴まれた。

驚いて振り返ると、ソファの背もたれに手を突いたフィルデナンドが苛立った顔を近付けてきた。

イタリア人らしく整った顔にドキッとして、智義は顔を背けた。

だいたい、と急いで絞り出した声は掠れている。

「……お、お前とは恋人でもない。俺が身体を売ろうが、誰と寝ようが関係ないだろう」

「関係ない、か?」

「イギリス留学では世話になったが、俺もお前に日本の仕事先を幾つも紹介したんだから――」

肩を掴む力が強くなったと思った瞬間、いきなりソファに押し倒され、智義は唖然とフィルデナンドを見上げた。

身長差にして二十センチ、体格に恵まれたイタリア人は駆けつけた時よりも精悍な顔を赤くしてのし掛かってくる。

「仕事を取ってこられるくらいいい身体してるなら、俺にも抱かせてくれよ、トモヨシ」

「は?」

「減るもんじゃないだろう? お前の身体、喰わせろよ」

「!」

驚いて言葉が出ないとはこのことだった。

呆然としている間に大きな手がむしるようにしてネクタイを外し、ワイシャツのボタンも飛ばしてしまう。

ふざけるな、と叫ぼうとした唇は大きな手の平に押さえ付けられる。

やめろ! 俺は誰とも寝てねぇ!

必死の主張はフィルデナンドに届かなかった。

熱い手がボトムをあっという間に脱がせ、藻掻く間に靴ごと床の上に落とされる。

必死の抵抗も空しくいきなり胸に噛みつかれて智義は悲鳴を上げた。

学生時代、エスの気があったイギリス人の恋人に執拗に愛撫され、感じるようになった乳首は完全に弱点だった。

乳頭に軽く歯を立てられ、やわく吸われながら舌でぬるぬると愛撫されるだけで腹の底がかっと熱くなり、またたく間に腕から力が抜ける。

それに気付いたフィルデナンドは舐めてしゃぶりながらさらに目尻をつりあげた。

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