ハタチノヒノヨルキミト…

・作

タイチとトモキは中学時代の同級生だった。中学時代は、仲のよいグループが同じだったが、2人で話すことはほとんどなかった。その理由はトモキが自分を嫌っているからだとタイチは思っていた。成人式の夜、酔い潰れたタイチはトモキに車で送られることになった。その車内で、2人の関係は急展開をむかえる…―!

1月の第2月曜日、1軒のカラオケ店の1室は大きなにぎわいを見せていた。室内では、パリッとしたスーツやはかま姿の男性が十数人、マイクとグラスを回しあい、渡しあい、歌と会話に花が咲いていた。

今日は成人式だった。午前で式典が終わり、久々に顔をあわせた旧友との再会を祝い、予定の合ったメンツでカラオケ店へと移動してきたのだ。その中の1人、カワイタイチも、今日のために袴姿でキメていた。

タイチが生まれ育った町は人口も少なく、中学校も3クラスしかなかったため、ほぼ皆顔見知りだ。もちろん、その中でも合う合わないがあるけれど、このカラオケ店に集まったメンツは皆、タイチにとって仲のよい人間ばかりだ。

ただ1人を除いては…。

「タイチ!顔赤くね?大丈夫か?」

タイチと同じく袴姿の男が肩を小突いて聞いてくる。中学3年間、同じクラスでタイチとよくつるんでいた男だ。高校が離れてからはほとんど遊ばなくなったけれど、久しぶりに会ってもすぐに昔みたいに絡める、気心の知れた相手だ。

「あー…うん。皆の勢いに乗せられて結構飲んだかも。あんまりオレ、酒強くないんだよね」

「そうなん?俺、二十歳になった瞬間からサークルの飲み会で毎週のように飲まされて酒強くなったわ」

「昔は炭酸とコンビニの唐揚げばっか食ってたのにな」

「アハハっ今でもコンビニの唐揚げは好きだわー。やーでも、こうやって久々に皆で集まれんの楽しいよな。シミズまで来てくれたし」

男が言う、シミズという名前に、タイチはピクっと眉を動かした。視線を移した先、スーツ姿がよく似合う、シミズトモキがいた。

「あー…うん。そうね」

誤魔化すみたいに言って、タイチはジョッキに半分ほど残っていたビールをグイグイと飲んだ。喉を通っていくアルコールがビリビリとしみた。

タイチがよくつるんでいたグループ、そのなかにトモキもいた。陸上部のエースで成績も優秀だったトモキは男女問わず人気者で、誰にでもわけへだてなく、いわゆる優等生だった。ただ、タイチはトモキが苦手だった。いや、最初はそれなりに仲よくしていた。けれど、いつからだろうか、トモキの態度がやけにそっけなく感じるようになったのだ。それもタイチだけに。

例えば皆で談笑していても、トモキがタイチに会話を振るようなことは一切なかったし、たまに偶然、目が合ったときはワザとらしいぐらいにパッと視線を逸らされた。そこにタイチはいるのに、まるでトモキの中では存在しないかのような、そんな態度をずっととられていたのだ。

元々2人で遊ぶ仲でもなかったので、トモキの態度をそこまでタイチも気にはしてなかった。ただ、嫌われているのだろうと認識して、タイチ自身も同じグループ内にいてもトモキと話すことは極力避けるようにしていた。そのまま卒業までトモキとは打ち解けることなくすぎていったのだ。

成人式で再会しても、やはり軽く挨拶をした程度で、お互いにそれ以上は会話をしていない。今もトモキはタイチとは対角線上の位置で、ワイワイと盛り上がっている。

「オレ、アイツになにかしたのかな」

ボソリ、とタイチは呟いた。タイチ自身はトモキを嫌う要素がなかったため、自分のなにがそんなにトモキのお気に召さなかったのか、久々に彼の顔を見ると気になってくるのだ。だからといってこの楽しい場をブチ壊すような真似はしたくないから、本人に聞くわけでもないけれど、自分のことを嫌っている人間がいる場というのは、あまり居心地はよくない。

気にしない風を装いながら、実のところトモキの気配をバリバリに意識してしまっていた。それを紛らわせるために、また、タイチは強くもない酒に手を伸ばすのだった。

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