俺が『オメガ』になった理由 (Page 4)

 一卵性双生児なのに、第二次性別だけが途中から異なった俺ら。

 普通じゃありえないことなのに、俺は間違いなく『オメガ』で慧斗は間違いなく『アルファ』だった。

 何度検査してもそれは変わらない。年齢を重ねるにつれ体格や能力に影響が出始めた。

 今じゃ双子なんて面影もなく、兄弟にも見られない。

 兄貴としての威厳はないし、エリート社員の慧斗と違って俺は清掃員。

「さっさと解消してくれ…!」

 父親は申し訳なさそうにしながらも、身体を壊した母のために俺を手放した。

 だって双子のはずなのに、兄はオメガで弟はアルファなんて笑い話じゃないか。

 アルファからオメガに変わった俺の身体。

 それは極稀にあるらしいけど、もう一つ問題点があって俺は手切れ金と共に家を追い出された。

「俺の気持ちがお前にわかるか? 俺がどんな思いで生きて来たのかわかんのかよ!」

「…わかんないよ」

「ならもうさっさと…ッ」

 顔をあげると、慧斗は俺を見て優しく笑った。

 とても悲しそうに、俺の目元を撫でながら静かに話す。

「七星がオメガになったのは俺のせいなんだ」

「ッ…関係ない」

「あるよ。俺が七星を好きすぎて、七星の身体が変化しちゃったんだ」

「…そんなんでなるわけ」

「なるんだよ」

 慧斗は残酷に淡々と俺の知らない真実を話す。

「寝ている七星に俺の精液を注いでたから」

「う、そだろ…? どうやって…んなこと…」

「口から少しずつ、ね」

「ッ…だ、だからってそんなことでなるわけないだろ!」

「確かにそれだけじゃならないね」

 それだけじゃならない。

 その言葉の続きを聞くのが怖かった。

 精液を飲ませられていたってだけで衝撃的なのに、これ以上の真実を知りたくない。

 なのに慧斗は頼んでもないのに、あっさりと教えてくれた。

「少しずつ七星に特別なお薬を注射してたんだ」

「ッ…」

「七星がオメガになりますようにって」

「…なん、で」

「だってそうしないと一緒にいられないから」

 そう言った慧斗の声はとても静かで後悔している様子なんて微塵(みじん)もなかった。

 こんな真実知りたくなかった。

 知りたくなかったのに、もう二度と戻ることもできない。

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