再会の日に (Page 4)

目が覚めると、もう夜は明けそうだった。
スマホを見れば、何件もの不在着信。それもそのはずだ、この後に何件か予約が入っていたのだ。

「…最悪」

店に電話をかけようとしたところで、隣から手が伸びてきた。
手首を取られて、スマホをベッドサイドに放り投げられる。

「さっき、俺から電話したから。シカトでいいよ」
「は…?」
「店だろ、その着信」
「いや、電話したってどういう…」
「だから、辞めさせますって。こっから先の予約の金は、俺が払うからって言っといた」

一瞬言っていることが理解できなくて、眉をひそめる。
そのとき、また着信音が鳴った。店からだ。

出ようとしたところで終話ボタンを押され、スマホはもう一度宙を舞うことになった。

「ちょっと…何すんだよ!」
「いいから、もう」
「よくないって…」

腕を引っぱられて、抱きしめられる。
まだ少し汗ばんだ肌と頬がくっついて、颯斗の心臓の音が聞こえた。

「…俺、ふざけてなんかないから」
「え…?」
「本当に、良太のこと守るつもりだから」

心臓の音が、少しだけ速まった気がする。
顔をあげれば、いつになく真剣な表情を浮かべた颯斗が俺の瞳をじっと見つめていた。

この優しさに、甘えてしまいたい。
だけど、颯斗と一緒になれるほど、俺はきれいな人間じゃない。

「…あのとき、抱いてくれたら…よかったのに」

思わず、口をついて出た言葉。
颯斗は俺の髪の毛を撫でて、さっきよりも強い力で俺の体を抱きしめた。

颯斗しか知らないまま、大人になりたかった。
きれいな体のままで、抱かれたかった。

取り返しのつかないことだとわかっているのに、涙が溢れる。
颯斗はただ、優しい声で、俺の名前を繰り返し呼んだ。

窓の外には、きらびやかな夜景。
そんな夜景を見ながら、無邪気に笑いあえる―…もしかしたら、そんな未来があったかもしれない。

幸せになることが、怖い。
そう思ったのは、このときが初めてだった。

Fin.

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