その声で抱いて (Page 4)

 

「俺、顔もいいって結構言われるんだけどな」

「…いいから、そういうっんっ!ぁ」

ちょっとした反発心で、冷たく言い放つマコトの声が止む前に、先端を押し込んでやれば、すぐに声色が変わった。ただ、少し意外なのは、先程は男の指を嬉々として受け入れていた孔が、指よりも遥かに大きい男の自身はすんなりと受け入れようとはしてくれなかった。

 

「ちょ…キッツ、」

挿入しようとすれば、咥えこんだ先端をギュウギュウと圧迫しては押し戻そうとしてくる。すると、ふぅ、ふぅ、と浅い呼吸を繰り返していたマコトがためらううように言った。

「だって…初めてだから」

「えっ!?」

耳を疑う言葉とは正にこういうことをいうのだろう。反射的に力を緩めたせいで、マコトのナカに何とか挿入っていた先端がスプ…と出てきた。

 

この界隈のゲイが集まる場所は殆ど行き尽くしている男が初めて見る顔だから、あまりそういう場には足を運ばないタイプなのだろうとは思っていた。けれど、初対面でいきなりホテルに誘うような相手が、今日が初体験だなんてどうして想像できただろうか。

「…いいの?俺で?」

確認するように男が聞けば、マコトは後ろ手を伸ばしてきて、男の自身を掴むとたった今抜け出たばかりの孔へと誘導してくる。

「いい…から。早くちょーだい。ずっと、僕、お兄ちゃんとこうなりたくて、いつも1人でお兄ちゃんとスルとこ、想像してたんだからっ」

どうりでやたらと小慣れていたわけだ…と、男は理解した。

 

“お兄ちゃん”と慕う相手に、おそらく叶わぬ恋心を抱いて、彼を想いずっと独りで慰めていたのだろう。

 

マコトの純粋な想いが、健気でイタいと、男は思った。そして、いま、マコトを救ってやれるのは、自分しかいないのだと。

 

マコトの手で再び宛てがわれた自身を、ゆっくりと沈み込ませていった。

「あぁっ…あ、お兄、ちゃんっ…すごいっ」

マコトの意志に従うように吸い付いてくる粘膜と、マコトを守るように圧迫して押し出そうとしてくる肉壁が、侵入してくる男のソレをキュウキュウと締めつけてくる。

「キツ…痛くない?」

汗で、全身がしっとりと濡れているマコトに聞けば、プルプルと横に振られる首。

「痛く、ないからっ…早く、キてぇ…!」

その声に招かれて、男は自身を一気に最奥まで貫いた。

「あぁっー…っ!」

悲鳴とも喘ぎとも取れる声でマコトが叫んだ。汗ばんだ彼の背中と太ももには、ポツポツと鳥肌が立っていた。

「大丈夫?抜く?」

「やぁっ抜か…ないでぇっ!」

泣いているような声で懇願されたら従うしかなかった。

 

「あっあっあんっはぁっ…んぁ」

男の腰の動きにあわせてあがるマコトの嬌声に、悲しい音色が混じっている。バックで挿入しているからその表情は伺えないが、本当に涙を流しているような気がした。できることならその顔を振り向かせて唇を奪ってやりたい。出逢った瞬間に垣間見えた、ビー玉のようにクッキリとした丸い瞳に見つめてほしい。けれどそれはできないのだ。マコトが求めているのは多分…

 

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