スイーツみたいに甘い彼

・作

消防士の環はスイーツの食べ歩きが趣味で、立ち寄った評判店でパティシエの有起哉と出会った。ゲイであることを隠して有起哉の店に通っていたが、意を決して自宅に誘うと、有起哉も環のことを憎からず思っていて……。

 環(たまき)は、夜勤明けに『カフェ・ド・パルマ』に行くことを楽しみにしている。四日に一度だけ訪れるこの店は、楽園だ。そして目的はもうひとつ。

「あ、環さん来てくださったんですね!」

 パティシエの有起哉である。

 出会いは約一年前。まだ環が新人時代に、自分へのご褒美だと、遠くの店まで足を伸ばした時のこと。

 評判店なだけあって、ディスプレイのケーキはどれも美味しそうだった。いくら環が大柄だといっても、頑張ってせいぜい3個。真剣に考えていると、後ろから声がかかった。

「あの、ケーキお好きなんですか?」

「あ、ごめん! 今決めるから」

 慌てて注文し、トレイを受け取ると、後ろから先ほどの声の主が相席を頼んできた。男のトレイに並べられているケーキは3つ。どれも美味しそうだ。男は、にっこりと笑った。

「よかったら、お互いに半分ずつ食べて、6種類味わっちゃいませんか?」

 これが有起哉との出会いだったのだ。

 その後二人は打ち解け、環の方は夜勤明けに有起哉の店へ寄ることが日課になった。
 環が有起哉に警戒心を抱かなかったのは、有起哉の物腰だけが理由ではない。それは直感──コイツはきっと俺と同類だという確信──があったからだ。

 環はゲイなのである。

「今日は求肥(ぎゅうひ)を乗せたタルトが美味しいですよ」

「あんみつとかに入ってるやつか?」

「タルト生地の上に薄く小倉を塗ってますから、本当にあんみつみたいですよ」

 環はそのタルトと、季節商品だというシャインマスカットのショートケーキを注文する。

 トレイを席に置きながら、環は思案した。思いを伝えたい。でも、パートナーがいるかもしれない。脳内で何度も会議を開いていると、コーヒーのおかわりを注ぎに来たのは有起哉だった。

 勇気を振り絞ってお誘いをかける。

「…よかったら、今日うちに来ないか?」

「え?」

「母から届いた珍しいフルーツがあるんだ。ケーキに使えないかと思って」

「いいですね!」

 マップを共有して、有起哉が立ち去った後に環はコーヒーを一気飲みした。

 やった。これで夜に告白でもできれば、上々だ。もちろん振られる可能性だってあるのだが…。それでも環は帰宅後、ベッドシーツを替えたり掃除機をかけたり、家事に精を出した。

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