うなじに赤い花 (Page 3)

ドスンッと乱暴すぎない力でベッドに倒されて、アオイは慌ててキョロキョロと辺りを見回す。

「え、ちょっ…何」

レイタは、アオイの上に馬乗りになると、頭上に漫画を掲げてみせた。

「アオイ。これ、誰にも言わないからさ、俺に付き合ってくんない?」

ニンマリと悪戯っぽく笑うレイタの顔は、からかっているだけなのか、本気なのか、わからなかった。

「レイ…タ?」

ただ、嫌な予感はビンビンとしていて、恐々と彼の名を呼んでみたアオイの耳に、衝撃的な言葉が入ってくる。

「ヤッてみたい。アオイと」

こういう展開、BL漫画で見たことある…と、とっさにアオイは考えて、焦って手足をバタバタと動かした。

「ちょ、ちょ、待って。おかしい。おかしいよねレイタ。ヤッてみたいってその…」

「だから、セックス。男同士の。興味あったんだよね」

「はぁ!?」

まさに耳を疑う言葉だった。

スル…とすくうように顎を持ち上げられたところで、アオイの頭の中で危険信号が激しく点滅しだした。現状として、レイタはアオイの上に馬乗りになり、今にもキスせんばかりに構えているわけで。それはつまり、どちらが受けになるのかなんて、腐男子でなくとも容易に想像がついた。

「いや、レイタ!ダメだってそんな!レイタはイケメンだしお洒落で友達も多いリア充でっ!俺の中では攻めとして申し分ないよ!?」

「は?」

「でも、相手が俺なのはダメだっ!こんな暗くてヒョろくてダサい奴じゃなくて、レイタの相手ならもっと可愛くて年下で、強気受けが俺は――」

「もう、ウルサイ」

その言葉と共に、アオイの声は塞がれた唇に飲みこまれていった。

「レイタっ…、ね、ほんと待ってっ」

チュッ、チュッとついばむようなキスが、唇から頬、耳、首に降ってきたところで、アオイはトントンとレイタの肩をタップした。秘密を知られてしまったという弱みがあるから、強くは突き放せないものの、何とか聞いてもらおうとしつこくレイタに訴えた。

「何。もう観念してよ」

煩わしげに、眉間のシワを深くするレイタに、アオイはうぅ…と涙目になる。

「や…だって、これ。俺が受けってことだよね?」

「嫌?」

「嫌だよ!ってかそもそも…俺…っひぁっ!」

ゴニョゴニョと言いづらそうに口ごもるアオイにしびれを切らしたのか、レイタの手が無遠慮に彼の下腹部をムンズと掴んできた。

硬くもなっていないソレを、手の中で弄ぶようにしながら、レイタは言う。

「ね、取り敢えずさ。ものは試しって言うじゃん?嫌なら止めるから、ヤレるとこまでヤろうよ」

キュッと自身を握られて、ドクンッと血流が上がるのを感じた。

「あ、ちょっと硬くなった」

嬉しそうなレイタの声に、羞恥心が煽られる。

多分、きっと何を言ってもレイタはコトを進めるつもりなのだろう、とアオイは察した。スルスルと下腹部を撫でてくる彼の手は、じゃれあいの域をとっくに越えている。アオイ自身も性欲が刺激されたのか、レイタの手つきに徐々に身体が敏感になってきているのがわかった。

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