神様の言う通り (Page 2)
一応賽銭(さいせん)箱に小銭を入れ、これまた古ぼけてだいぶ黄ばんでいる鈴の縄を揺らしてみる。
手を合わせながら、泰人はまず今日の面接のことを祈る。
今日の会社、面接はいつも通りイマイチだったけど…採用されますように。
「おい」
あと、もう就活でお金がないので臨時収入がありますように。
「おいお前」
あ、それと最近ばあちゃんの膝の調子が悪いらしいのでそれもよくしてあげてください。
「宇賀神泰人!!」
「はいいぃぃ?!」
急に自分の名前を呼ばれ、軽く飛び上がるほど驚きながらも返事をした泰人の前にいつの間にか背の高い男性が立っていた。
つい集中して祈りすぎて全然気づかなかった…っていうかこの人なんで俺の名前知ってるんだ??
知り合い…ではないよな…?
銀色の肩下まである長い髪に、鋭い切れ長の瞳は髪の色に近い。
歳は20代後半…というところだろうか。
190cm近くありそうな長身とちょっと浮世離れした出で立ちのこの男に、全く見覚えはなかった。
なんか、着てる服も着物みたいな感じだしここの神社の人かな…?
でもなんで俺の名前を…??
「えっと…すみません、どこかでお会いしました…?」
「今そこで私の頭を撫でただろう」
今?この人の頭を??
そんなわけないだろう。
なんか怪しい人だ…ヤバい人かな。
パニック寸前の頭をフル回転してなんとか言葉を振り絞る。
「あ、あの…俺、その、人違いじゃ…?」
「人違い?」
怪訝(けげん)な顔をされてすごまれ、内心縮み上がった。
「宇賀神泰人、会社に採用されるようにと臨時収入と祖母の膝の件を祈ったな」
「…え…?」
「私はこの神社の神だ」
「…」
「何を驚いている?神なのだからここに来る人間の姓名や願ったことくらいわかる」
俺は今、多分キツネにつままれたような顔をしてると思う。
全く意味がわからない…。
でも、俺の名前とたった今願った内容を全部当てていた。
超能力者とか?
少ない脳みそで精一杯考えながら、ふとその男の後ろに目線をやると、先程鳥居のそばにあったこま犬の像がなくなってるのに気付いた。
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