既婚者の後輩の顔が好きすぎる俺
「俺はゲイじゃないけど先輩とはセックスしたい」そう言って後輩の沢田は今日もうちに来る。左手の薬指に指輪を光らせて。イケメンで既婚者。だけどそんな沢田が奥さんをほっといて俺に会いに来るのは、正直気分がいい。仕方ない、こいつが俺に会いたいんだから。俺は自分に言い訳しながら、今日も沢田を受け入れてしまう。
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。
俺は部屋着のままドアへと向かう。
中から鍵を開けてやると、訪ねてきたそいつが扉を開けた。
「先輩」
扉の向こうから見えた顔。
丸っこい二重を細めて、嬉しそうに笑う。
俺が今まで出会った中でも一番にイケメンの男である、大学の後輩――沢田ケイが、そこに立っていた。
「お前、ほんといつも急な」
俺がそう言って小さくため息をつけば「だって会いたくなっちゃったんだもん」と悪びれもしない返事がくる。
カチャンと音がして、沢田が内側から鍵をかけたのがわかった。
俺は部屋に戻ろうとくるりと回れ右をする、と。
「……ッ」
後ろから伸びてきた腕が、あっという間に俺を抱き締めた。
俺より一回り背の高い沢田は、そのうえ鍛えているらしく細いくせに妙に力が強い。
すっぽりとかかえるみたいにされたまま、背中から熱い声が呟いた。
「先輩、…会いたかった」
「…誰にでも、言ってんだろ」
俺は小さく言い返す。
沢田はくすくす笑いながら、俺の肩に乗せたおでこをぐりぐりなすりつけてくる。
まるで犬みたいなじゃれ方で、はっきり言ってかわいい、と思ってしまう。
「ほんとです。今日の仕事めっちゃハードだったし、夕方くらいから先輩のことばっか考えちゃって」
「仕事に集中しろよ、っていうか」
俺は、俺の薄い腹に回された沢田の左手に目を落とした。
薬指に光る、シルバーのリング。
それを指でそっとなぞる。
こいつには、奥さんがいる。
しかも結婚してまだ三カ月の、いわゆる新婚だ。
「…疲れてんなら、ちゃんと家帰れよ…」
家に帰れ。
というか、奥さんのところへ帰れ。
そういう意図の俺の言葉だった。
それを沢田は正しく汲み取って、小さく笑うと後ろから俺の顎を上へ持ち上げた。
真上から、逆さまになった沢田の顔が近づく。
と思うとあっという間に唇が降ってきた。
「ン……ッ」
遠慮なく舌がねじ込まれて、口腔内を弄られる。
熱い、濡れた塊がゆっくりと俺の粘膜を舐めまわした。
「ゥ……ふぅ、ン」
「……っは、」
ほぼ真上を向かされているから苦しい。
それがわかるのか、合間に息継ぎを入れながらゆっくりと舌が出入りする。
歯の裏をゆるりとなぞられて、舌の付け根のところをくすぐるようにされると腹の奥がぞわぞわしてきてしまう。
薄目を開ければ、俺が感じてしまったのがわかったのか、沢田が嬉しそうに目を細めた。
こういうときのこいつの顔はとんでもなくかっこよくて、俺はその顔が一番好きだ。
ぬるぬると俺の口の中と外を這いまわった舌が、ゆっくりと糸を引いて離れていく。
「ハ、ァ……ッ」
「…先輩」
見上げる沢田の頬も紅潮している。
俺の臀部(でんぶ)に当たっている沢田のモノが、角度をしっかりと変えている。
そうして沢田は、俺が予想したのとほぼ同じ言葉を言ってきたのだ。
「セックス、したい」
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