王族の子を産むことになりました。 (Page 2)
無事に出産を終えるまでは常に監視されているのだ。
必要最低限のものしかない部屋から出られるのは1日1時間と決められた運動の時間だけ。
規則正しい生活、食事。
妊娠するために健康的な生活をさせられている。
…今日はもう就寝の時間だ。
*****
「へぇ、こんな人なんだ」
俺の顔を見てニコニコと笑うキール王太子。
「あっ、あのー…」
「しーっ、大きい声だしちゃダメだよ。誰か起きちゃう」
キール王太子はベッドに腰掛けると「僕の男妊がどんな人なのかどうしても知りたくてね」と言う。
「でもそれは…」
「だから内緒なの。静かにしてね」
「…」
「思っていたよりハンサムだね。僕に似なかったらどうしよう」なんて笑えない冗談を言う。
「実はね、僕も男妊から生まれた子なんだ」
思わず聞き返してしまうような衝撃的なひとことをぽつりと言う。
「だから僕のもう半分の血を引く人はどんな人なんだろう、って…ね」
遠い目をして寂しそうな顔する。
「皮肉なことに僕も男妊の子を授かることになっちゃってね。だから一目でもいいから会ってみたかったんだ」
キール王太子はドアの方へ向かい、「いきなりごめんね。今日のことは内緒にしてね。それとありがとう」と部屋から出ていこうとした。
「あっ、あの! 明日も会ってくれませんか?」
*****
キール王太子は本当に次の日も会いに来てくれた。
昨日、なぜ俺がこんなことを言ったのかは突然目の前に現れ、衝撃的な話をされたことと、一番の理由がこの国の王子なだけあってオーラが半端なく、とても会話ができる状態ではなかったからだ。
「僕もね、3人のメイドに監視されながら自分で射精するまでじっくり見られているんだ。こういう立場だから仕方がないけど、すごく嫌だよ」
こうやって話してみるとキール王太子は我々と同じ人間なんだ、と感じる。
「…そういえば、君はなんていう名前なの?」
「…ヒース」
「ヒース? 素敵な名前だね」
少し話をすることには慣れたが、やはり王太子と言われる人に褒められるのは気恥ずかしい。
「じゃあ…もう行くね。見回りの人来ちゃうからさ。またね」
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