競泳コーチの水陸両用スタミナ特訓! (Page 4)
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俺と漣太は親同士も同級生の間柄で、赤ん坊の頃から何をするにも一緒だった。決定的に違うのは――俺が恋をする対象が男ということだけ。
人生初の恋は、担任の男性保育士だった。女の子たちは彼に向かって簡単に『好き』と伝えていたから、俺も彼女たちに混ざって告白してみたのだが…そこで男同士の恋愛が普通ではないことを思い知る。『ありがとう』と唇をひきつらせた担任は―それからすぐ俺と距離を置くようになってしまったのだ。
『せんせぇ…』
彼はいつも誰かの旦那さん。オモチャの包丁を叩く女の子の中心でニコニコと笑っているのだ。同じようにおままごとで遊ぼうとしたって、俺は蚊帳(かや)の外である。
『キョウ、泣くなよ!お前にはオレがいるじゃんか。あー、腹へったぁー、夕飯何作ってくれんの?』
俺が笑っているとき、困っているとき、泣いているとき…すっ飛んできてくれるのは漣太で、恋の天秤はいつの間にか彼の方に傾いていた。
小中高、果ては大学まで同じ道を進み、今でも“恋人ができるまで”とルールを決めてルームシェアをしているのだ。
だが、俺はともかくとして…漣太も身を固めないことが気になった。彼の親が早く結婚しろと迫っていることも、先日後輩の女の子から告白されたことも、俺は知っているのに。
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「…大体教え子とヤるなんて、連盟にバレたら大問題だぞ」
「漣太には関係ねぇだろ。それより茂木さんに返事はしたのか?早くしなきゃ逃げられんぞ」
茂木さんというのは、彼に告白した後輩――もちろん“女性”である。漣太は直々の後輩からの告白に、戸惑いを隠せないようだった。
「向こうも30歳なんだし、付き合うも何もさっさと寝ちまえよ」
奥歯を噛み締めて笑顔を作ると漣太に『その考えがよくねぇんだよ。相手は女なんだし、“もしも”があったらどうする。避妊だって万全じゃねぇんだ』と諭された。彼は彼女のことを真剣に考えているのだ。俺のようなビッチとは釣り合わないに決まっている。
大好きな漣太と一緒に暮らせるリミットが迫っていると察した俺は、やさぐれた勢いで教え子たちに犯してもらっていたのだ。
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「ふぅー」
日付が変わった今日は土曜日。仕事は休みである。そのまま寝ようとした俺を制し、彼は湯舟に熱い湯を溜めてくれ…『いいから入れ!』と浴室内に押し込まれてしまった。
無色透明の湯の中に見えるのは、何十箇所にもつけられたキスマーク。早く消したくて擦るのだが、赤くなるばかり。侘しさのあまり、温かな雫を水面に落としてしまう。
(漣太はなんで俺なんかと一緒にいてくれんだ…。優しくされると辛れぇよ…)
首や耳元につけられたそれは、漣太にも見えていただろう。いくら俺が誰とでも寝る男だと理解していても、気持ち悪くはないのだろうか。
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