競泳コーチの水陸両用スタミナ特訓! (Page 6)

漣太の――絶対に嫌われたくない相手の冷徹な声に震えが走る。平然と痴態を晒す俺に神様が救いの手を差し伸べてくれることはない。

幼い日と同じように、俺は選択を誤ってしまったのだ。

「ごめん…ごめん、ごめんっ!!おれ、俺…」

――見捨てないで、傍にいて…すべては俺自身の身勝手なワガママ。彼にとっては迷惑な話である。全部こちらが悪いのに、“ごめん”のあとに続く言葉が見つからず、風呂場で出しきったハズの涙がまた溢れてくる。

泣いてどうする。泣いたところで、この関係は修復できないのに――。

「ち、違げぇっ!!怒ってねぇからっ!!」

みっともなくボロボロと涙を流す俺に慌てたのは、漣太の方だった。宥(なだ)めようとしてくれているのか、俺にティッシュやクッションを押し当て、最終的には彼の布団にくるまれた。

「頼む、泣くなよ…。ずっとお前を見ていた俺が、このくらいのことで怒るワケねぇだろ?――お前が好きなだけだ」
「え…?」

“何を言ってんだ?”と聞き返そうとする俺を、漣太はまたしても強引に抱きしめた。

「反省してくれたらそれでいい。30年以上片想いを拗らせた男は面倒だぜ?」

*****

「…俺も暁の生徒にしてくんねぇ…?」
「だ、ダメに決まってんだろ…ちょ、ちょっとまっ…水入って…!!漣太、なんでこんなに…ウマイんだよぉ!!」

長い寄り道をした俺らは、晴れて恋人となっていた。さらに彼は俺が利用するプール施設で監視員の副業を始めたのだ。

今日は俺がコーチを務めるクラブの活動日。施設の管理者に、プール清掃を2人で行うと告げた俺たちは…水抜き前の水中内でひそかな情事を楽しんでいた。

水中でのセックス。漣太のペニスが出し挿れされるたび、ポコポコと気泡が浮き上がってしまうのがいたたまれない。彼は恥じらう俺をからかっているのか、額や頬にキスばかり落としている。

「俺って、そんなに…ウマイ、のか…?今まで…経験ねぇっ、から…さ…」
「――ッんあっ…え、それってどういう意味…あっ、れ、漣太ぁ!!」

教え子たちとは異なり、漣太はとにかく優しくて。直腸越しに熱い塊で前立腺をノックしてくれるのが愛おしくて仕方ない。

あまりの気持ちよさで力が入らず、プールの縁に掴まった漣太の膝上に乗る格好の俺は…頭がふわふわしていて…“経験がない”と暴露した彼の言葉もワンテンポ遅れて届いていた。

俺は知らなかった。漣太も昔から俺を好いていてくれたことや、彼が付き合っていたと思い込んでいた女性たちは、嫌がる漣太を無理矢理食事に連れて行っただけで、そのあとすぐに振られていたことを。

「この歳になっても俺が守り続けてきた、“童貞”貰ってくれてありがとな、暁コーチ?」

――漣太のこの言葉を聞いて、俺の中ですべてが繋がったような気がした。

Fin.

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