抵抗してみて?
「無理矢理されてるみたいに抱かれてほしい」そう告げられた雪也(ゆきや)は、彼氏である幸輝(こうき)のリクエストを渋々承諾する。言われた通りやってみるもののあまり抵抗できずにいると、幸輝から「抵抗しないようなら朝まで抱き続けるよ」と追加条件を出されてしまう。果たして雪也はちゃんとリクエストに応えられるのか、それとも──。
「今日さ、無理矢理襲われてる風に抱かれてくれない?」
「ふざけんなこんのクソ変態」
俺の彼氏は毎回突拍子のない提案をしてくる。この前は体操着。その前は敬語プレイ。
「そんなぁ…。嫌なら…今夜は特注のラブドールで発散するしか…」
「だぁああ!もうわかったよ、そんなキモいことするなら俺としろ!!」
小柄な俺に比べて、彼氏の幸輝は細身でありながら背丈や骨格は男らしい。
タレ目がちな甘い顔をしたこいつはイケメンだと思う。
性格も…性癖を除けばいい奴だ。
だから悔しいかな、こいつに真剣な眼差しで押し倒されて嫌がるなんて…なかなかに難しいことだった。
「っ、この……!」
「ほら頑張って。嫌ならもっと抵抗しないと」
ぐっと両手をベッドへと押さえ付けられる。とっさに押し返そうとしてもびくともしない。
「や、めろ、離せ……っ!」
「弱い弱い。そんなんじゃすぐ犯されちゃうよ。もっと力入れて」
「…っ!…う、ぁ…」
首筋をゆっくり舐められると、身体が昂る。
そのまま鎖骨をちう、と吸われ力が抜けてしまった。
「や……」
「あんまりぬるい抵抗だと、今日は朝まで抱き続けちゃうよ?いいの?」
真面目な声で耳へ囁かれてぞくりとする。そうだ、こいついつもはセーブしてるけどとんでもない絶倫なんだった。
前に嫉妬から延々と抱き潰されたときのことを思い出して、血の気が引いた。
「ほら。知らない男に押し倒されてると思って全力で抵抗して?」
「く、そっ……!!」
朝までコースはごめんだとこちらも必死に抗う。
普段はバカみたいに甘ったるい声で攻め立ててくるのに、静かな顔で荒々しく俺を犯そうとする姿に、不覚にも後ろがうずいてしまう。
そんな自分に気付かれないように、無我夢中で暴れて抵抗した。
おさえつけられた両手は力の差でびくともしない。雄としての圧倒的な筋力差を見せつけられるようで悔しい。
「……ッく、この…っ!」
力を込めてもまるで変わらない体勢を見て、目の前の男が軽薄に笑った。
カッと頭に血がのぼって俺はさらに激しくもがいた。
「可愛いね……それで全力なんだ。たまんない」
聞いたことのない声色にぞくりとする。まるで欲情しきった捕食者のような、地を這うような声。
ひるんだ俺の一瞬の隙をついてズボンのチャックを下ろされ、そのまま乱暴に下着ごと脱がされる。
「ぉ、い!やめろ…!!」
「もう勃ってるの?」
笑いながら、上を向いた俺自身を遠慮なく握る。興奮を見透かされたようで顔が赤くなるのが自分でもわかった。
抵抗してみて?
尊い
セキ さん 2022年6月18日