人見知り男、唇性感帯ヤンキーを拾う (Page 4)
こっちの人間…つまり俺がゲイであることをコイツは知っているのだ。恐らく店から出てきたところを見ていたんだろう。もしくは、スカウトマンの勘か。あいにく俺は一夜限りの関係というものを好まない。というより、人見知りがそんな高難易度クエストに挑めるワケがない。
1年半通ったソープのアオイくんとだって、ようやく“抜いてもらう”関係になったばかりなのだから――それに初対面、10コ下の態度がデカいヤンキーなんて抱く、抱かれる以前に恋愛対象外だし、願い下げだった。
「お前になんか興味はないんだよ…慈善(じぜん)事業みたいなモンだからな。腹いっぱいになったんなら、余計な口叩いてないでこっちに来い。今度こそ、消毒してやるからな」
「最悪…」
何か文句を言うのが聞こえたが、それを無視していると『あぁ~もうっ!』と一声叫んだ龍春は、頭を掻きむしりながら、俺に背を向けた状態であぐらをかいた。
「…じゃあお願い。でも痛くしないでよ…」
この様子では、中身はまだガキのままじゃないか。ケンカには慣れていても、痛みには弱いらしい。夕飯の買い出しついでに手に入れたピンセットを使い、脱脂綿(だっしめん)に吸い取らせた消毒液で、傷をポンポンと押してやると、彼の肩が跳ね、激痛に堪えているのがわかる。
首筋から冷や汗までつたい落ちる姿を、不覚にも可愛いと思ってしまった。
「ホラ、もうおわり。バンソウコウも貼ってやったし、ほっぺたはガーゼ、腕や足には包帯。どうだ、完璧な看護だったろ?もう遅いし、今日は寝よう。龍春は俺の部屋のベッドを使っていいからな」
これ以上変な気を起こしてしまってはマズい。誰にでも身体を許そうとする相手が心配ではあったが、少し距離を取らなければ彼のペースに飲み込まれそうで、龍春を俺のベッドに横たわらせ、自身はリビングのソファで寝ることにした。
「ちょ、ちょっと待ってよ…部屋に連れ込んでおいてそれはないでしょっ!」
「あー?」
そのまま静かに立ち去ろうと気を利かせたというのに、大声を上げる龍春に面食らう。
今、何時だと思っているのだろうか…なんとも面倒な奴を拾ってしまったと少し後悔してしまう。
「わかった、わかった。明日またゆっくり聞いてやるから…おやす――!?」
機嫌を損ねた彼に“おやすみ”の挨拶をしようと顔をのぞき込んだ途端(とたん)、アゴを掴まれたまま唇を奪われてしまった。
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