人見知り男、唇性感帯ヤンキーを拾う (Page 7)
「なぁ、龍春…仕事がないなら、このまま俺の家で家事手伝いをしてくれよ。料理と掃除と洗濯だけでいいからさ。俺はお前に身体での代償(だいしょう)は求めない。家事代行分は給料も出すから…もう知らない奴に身体を売って生活する必要はねぇよ。これから俺がお前を養うからさ…」
彼はこの提案を受け入れてくれたのだが、翌日から少し、後悔することになる。
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「うそだろ…」
焦げ臭い匂いに叩き起こされ、火事にでもなったかと慌てたが、原因はアイツだった。
「だって、豪が言ったんだろ?俺に飯作れってさ」
――痛めている頬を膨らませている彼が憎たらしい。自分の失敗を誤魔化そうとしているのか、それとも一度身体の関係になったからなのか、慣れ慣れしく名前で呼んできたりなんかして…それは反則だ。
黒コゲの目玉焼きを見ても、嬉しくて、堪らなくなってしまう。
「お前、料理経験は…?」
「うーん、小学校の家庭科以来かも」
この様子では、炊き立てのごはんと味噌汁にありつけるのも遠い未来になるだろう。掃除機は使ったことがあるのか、洗濯機は回せるのか…先が思いやられるばかりで頭痛がした。
(でもまぁ、俺が教える楽しみが増えたってコトか…)
苦すぎて卵の味が感じられないシロモノを口に運びながら、俺は龍春との今後に想いを馳(は)せた。
Fin.
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