それはお前だけじゃない (Page 2)

幼馴染の蓮でも珍しいと思うほど、今日の優斗はいつも以上に荒れている。
さすがに心配になって、蓮は詳しく話を聞こうと優斗の肩に手を伸ばした。

そのとき、蓮のスマホが軽快な音を立てた。

「……すまない、少しだけ返信する」
「……誰?」
「研究室の先輩だ」
「……あの茶髪の女の人? ……何の用?」
「飲み会の誘いだな」
「は?」

蓮と優斗は違う研究室に所属していたが、その先輩のことを優斗は知っていたようだ。

「行かねえよな?」

優斗は不機嫌を通り越して、怒りを表情ににじませていた。
蓮は不思議に思いながら、先輩に返事を返してスマホを脇に置いた。

「なんだ、今回は本気だったのか?」
「何の話だよ?」
「振られた彼女」
「あんな女マジでどうでもいい」
「?」

では、なぜそんなに荒れているのか。
蓮はますます不思議に思った。

「で、なんて返したわけ?」
「行くって返事した」
「――なんでだよ!」
「っ……どうした? なんで怒ってる?」

淡白な蓮と違って、優斗は皆に『優しい』と言われるような男だ。
裏表が激しいところはあるが、蓮も優斗のことを根は優しい人間だと思っている。
そんな優斗に怒鳴られて、蓮は少しだけ肩を弾ませた。

酔いすぎだと思った蓮は、優斗に水を飲ませようとキッチンの方へ向かおうとした。
そうして腰を上げた蓮だったが、優斗に肩を押されてバランスを崩した。

「っ!」
「……」
「おい、危ないだろう! ……優斗?」

チューハイ1本とはいえ酒を飲んでいた蓮は、あっけなく尻餅をついた。
ベッドがあって助かった、と内心呟く。

さすがに文句を言おうとした蓮が優斗の方に顔を向けると、すぐ目の前に優斗が近付いてきていた。

「優斗、どうし――」

言葉が途中で途切れた。

「……はっ!? な、なんで……」
「……お前、なんなんだよマジで……ほんと、ありえねえ……」
「いや、……は? なに……」

蓮は自分の唇を手のひらで覆いながら優斗を見上げる。
優斗は蓮の肩を痛いくらい強く掴んで、ベッドに右膝を乗せた。
ベッドのスプリングがギシリと音を立てた。

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