アプリで知り合った男が変態だったんだが (Page 2)

「ここの料理、カラオケ店にしては美味しいんですよ」

「へぇ、何度か来たことあるんだ?」

フォークを手にしてパスタを絡め取り、口へと運ぶ。

…確かにウマいな。特にミートソースは市販のものではなく、一から作った自家製のもののように思う。一通り食べ終わると一気にビールで流し込む。

…幸福を感じる。

「ふぁあああ…」

ふと眠気を感じ時計を見ると午後9時過ぎ。あれ? 疲れてるのかな。

「もう眠たくなったんですか?」

「んっ…なんか疲れてるみたい」

俺が覚えているのはここまでだった。

*****

次に記憶がはっきりしたのは、おそらくどこかのラブホテルのベッドの上だった。

「…え?」

「あ、起きました?」

ぼやけた視界にニコニコとしたネコの顔が見える。

「突然寝込んじゃうからびっくりしましたよ!」

そうだったのか、と自分自身でも驚く。

「お酒、弱いんですか?」

「いや、潰れるなんて経験したことないよ」

ましてやビールジョッキ1杯だけだ。

「…で、なんでお前は全裸で座ってんの?」

ソファに全裸で腰掛け、タバコを吸いながら俺に話しかけていたのだ。

「僕、裸族なんです」

「いや、裸族って…」

せめてパンツは履いてくれ。気が付いたら相手が全裸なんてなんの冗談なんだ。そんなことを思っていたら立ち上がり、「水、飲みます?」とミネラルウォーターを手にし、こっちへ寄ってきた。

…下半身丸見えだ。
初対面でここまで堂々としているなんて珍しい。

「え、あ…ありがとう」

ネコがまたソファへ腰掛けようと背を向けた瞬間、俺は目を疑った。

「えっ、それなに? 本物?」

それ、とは腰に描かれている青いバラの落書き…タトゥーと思われるもので、男性の手の大きさくらい入っており、すごく目立っていた。

「…そうですよ」

また新しいタバコに火を着けながら答える。

「なんでそんなもの入れたの?」

モノホンの落書きなんて直接見るのは初めてだった俺は思わず質問責めにしてしまった。
痛くないのかとか、いくらぐらいするのかとか。そもそもなぜバラの絵を選び、入れたのか、と。

苦笑いをしながらもネコは質問にすべて答えてくれた。

「青いバラの花言葉って知ってます? “夢は叶う”なんですよ。僕、どうしても歌で食べて行きたかったんです」

よくある願掛け、というものなのだろうが正直童顔で小柄なネコにはまったく似合っていない。

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