童貞大学生はぬいぐるみ好きヤ●ザを嫁さんにしたい! (Page 2)
(さっきので完全に目、覚めちゃったな)
鵡川さんを背後から襲ってしまおうか、なんて邪悪な考えが脳裏(のうり)に浮かぶ。襟を立てたヘビ柄シャツの下から見える相手の白い肌には、オレが夜中につけた赤いキスマークが見え隠れしているのだから、無理もないだろう。
「久太…テメェまた変な妄想してんじゃねぇだろうなァ?」
「へ!?や、やだなぁ…いくら寝室に残る鵡川さんの香りで勃起してても、キッチンで襲おうなんて考えてませんよ。大体、ゴムもローションも寝室だし…オレとしては、オリーブオイルで試してみてもいいんですけど」
「…相変わらずヤベェこと考えてやがんな…バカなこと言ってねぇで、さっさと食え」
鵡川さんはそう言うと、むくれながらもパラパラに仕上がった玉子チャーハンを食器に盛りつけてくれた。どうやら、自分でも納得のいく出来になったらしい。オレには背を向けて、素っ気ない態度を取っているが、そこら中に並べたカプセルトイの動物フィギュアをこっそりと撫でて、微笑む姿が可愛いったらありゃしなかった。
「――ところで、旅行先は決まりました?オレ達の“新婚旅行”」
イカツイ風貌なのに、エプロンを身に着け、味噌汁をしゃくしで掬(すく)おうとしている相手にジャレつくと、今度こそ本当に苦い顔をされた。次に出る言葉は『危ねぇから大人しくしてろ』だろうか。
「別に俺ら結婚なんてしてねぇだろうが。テメェの妄想にいつまでも付き合ってられ…!?ぅん…バッ、ばかやろぉッ…んぁっ…ちゅ…は、はにゃせぇ…!!」
寂しいことばかり口にする鵡川さんは好きじゃない。元ヤクザのワリに線の細い腰を掴み、自分の方へと引き寄せ――噛みつくようにキスをする。上顎(うわあご)を舐めてやれば、強面(こわもて)の相手でも肩がビクつくのが最高だ。『放せ』なんて言っているくせに、気持ちよくなってきたのか…鵡川さんはサングラスを外して、テーブルの上に置いたかと思えば、口内の唾液を泡立たせるように舌を絡めていく。
「悲しいこと言わないでください。鵡川さんだって、ベッドの中じゃ『久太じゃなきゃイヤだ』って騒ぐじゃないですか」
「ハァ!?」
このオレの態度が気に食わなかったのか、怒りをあらわにした彼は、よだれに塗(まみ)れた口元を拭うと、凄みを利かせるように舌打ちを繰り返し、そっぽを向いた。
なぜ平凡な大学生活を送っていたオレが、こんな人相の悪い男に惹かれてしまったのかというと、これには深いワケがある。
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