童貞大学生はぬいぐるみ好きヤ●ザを嫁さんにしたい! (Page 4)
「う、ウソだろ!?ねぇ…!!確かに入れたのにッ!!」
相手が泣きべそをかくのも無理はない。中から出てきたのは、拳銃ではなく――ウサギやクマのぬいぐるみだった。
大中小といくつも出てくるぬいぐるみの数々に男が顔を擦りつけている様子から、このぬいぐるみは男の所有物のような気がした。
「あ、あのぅ…電話を掛ける前は、何をされていたんですか?」
心を落ち着かせるためか、テディベアを手に持ち『ダイジョウブだよ!』と自身を励ます彼にこのままではラチがあかないと言葉を掛ける。
「…アニキに報告する前、ケースケが無事か確認の電話をしたんだ。そういや、チャリにもぶつかったんだった…もしかしてアイツ、龍宮会の組員か!?」
男の話によれば、自転車でぶつかってきた相手は、付着した泥を拭いてやるから、寄こせよなんてセリフを吐いて、彼の手からボストンバッグを受け取ったらしい。
「どうして簡単に渡しちゃったんですか!?仮にも、拳銃が入っているバッグですよ!」
「だってこれ、アニキからの借りモンだぜ。汚したりしたら、ブチ切れられる…」
――もしかして、この男…天然か、それともただのバカなのだろうか。加えて、ボストンバッグを拭いてくれる相手から目を離し、敵陣に潜入中の仲間との電話に夢中になってしまったと言うのだ。
「絶対、そいつが盗み返しましたね…」
「くそォッ!!」
憎々し気に吠えた男は、一目散(いちもくさん)に走り去っていった。
「…変わった人だったな…」
残されたオレは、男とはもう関わり合いになりたくないと思いつつ――可愛いぬいぐるみを手にしたときに無意識に見せる、柔らかい彼の表情が頭から離れなかった。
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