童貞大学生はぬいぐるみ好きヤ●ザを嫁さんにしたい! (Page 6)
「ん…ぅん…ちゅ…はぁ――んちゅ…」
(――夜中に誰の声だ?オレ、女の子なんて連れ込んでないよな?)
鵡川さんに『おやすみなさい』と挨拶をして数時間後、オレは色っぽい女性のリップ音で目が覚めた。ボーっとする頭を掻き、声のする方向へ目線を動かす。
(そうだ。昨日鵡川さんが泊まりにきて、ベッドを占領したんだっけ…)
「あ…ぅん…ちゅっ…ちゅっ…」
リップ音といやらしい声はまだ続き、6畳半の部屋に反響している。
(まさか鵡川さん…他人の家に泊めてもらってんのに、オナってんじゃないよな!?)
興奮材料なんてないのに――なんて思いながら、このまま彼の甘い声を聞いているとこっちまで変な気分になりそうで、真っ暗だった部屋の照明を一段階上げ、相手へと近づいた。
(うそ…だろ…)
布団をめくり上げたオレは、ゴクリと喉を鳴らした。鵡川さんは頭の上にサングラスを乗せ、テディベアを抱きしめて眠っている。そいつを抱くために交差している腕…その片方の親指に吸い付いていた。いやらしいリップ音の正体は、鵡川さんが子供のように“指しゃぶり”する音だったのだ。
(これは…可愛いかも)
男になんか興味のないオレも、この光景には動揺が隠せない。気の迷いでも生じたのか、下半身が熱くなるのを感じてしまう。
「ぅん…ちゅっ…んん!!」
鵡川さんは、オレが昂っているとは知らずに、ちゅぱちゅぱと指を吸い続けている。布団を被っていた所為(せい)で、あんなに固めていたヘアセットも乱れ、切れ長の目に前髪が下りてきて――彼を幼くみせた。
(あぁ…もう!!)
彼女を作って、童貞を卒業してやろうと思っていたのに…今、目の前で眠る男に触れたくて、柔らかそうな唇にキスをしたくて仕方がない。
(ダメだ…相手が男とはいえ、寝込みを襲うなんて犯罪だ。それに鵡川さんは元ヤクザなんだぞ!?バレたら今度こそ終わりだ…)
彼に飛びつきたい衝動を理性で抑えつけていたのに、相手はこちらの気も知らずに、寝ぼけながらパジャマ代わりにと貸したジャージのファスナーを引き下ろしていく。薄い色素のついた小粒な突起がふたつ露わになったとき、その艶めかしい上半身をテディベアに擦りつけ――『アニキ』と口にした。
アニキ…2日前、電話口で鵡川さんが頭を下げていた相手だろう。ともすれば、兄弟の盃(さかずき)を交わした相手を好いているのか。
「ねぇ鵡川さん。そいつはアンタがこんな可愛いモン並べて寝てんの知ってんの?」
堪らず、彼の顎下を包んで問い掛ける。どうか起きないでくれ――これからオレが行おうとしている行為は、決して許されるものではないのだから。
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