僕は兄ちゃんの花嫁~血の繋がりなんて関係ない!~
「――血の繋がらない兄弟だったらよかったのに…」実の兄に恋をする蒼は、少女漫画のように自分と兄が義兄弟であることを望んでいた。血縁鑑定の結果が届き、落胆する蒼。兄はもうすぐ彼女と同棲を始めてしまうのだ。そんな弟を慰めていた兄が突然「一緒に風呂に入ろう」と驚きの提案をしてきて!?浴室Hの先に見える2人の未来とは…。
「兄ちゃんと僕、血の繋がらない兄弟だったらよかったのに…」
幼い頃からの僕の願い。惜しくもそれは、1枚の紙きれによって打ち砕かれようとしていた。少女漫画なんかでよく目にする、キョウダイとして育てられた2人のどちらか片方が恋に落ち、悩む話の結末は――なんだかんだ最終的に血の繋がりがなかったりして、うまいこと結ばれるんだ。
そもそも僕らは男同士で、キョウダイ以前に同性という壁もあるのだけれど、それでも血さえ繋がっていなければ、この感情を彼に伝える方法がいくらでもあったかのように思える。手元にある1枚の紙…僕が長年苦しんでいる悩みを解決しようと兄ちゃん、父さん、母さんが協力してくれた、“血縁鑑定”の結果をくしゃくしゃに丸める。僕と兄ちゃんが義兄弟であることを望むなんて、父さんにも母さんにも失礼な話だ。
それでも幼稚園の年長になってから、優しくて、頼りがいのある6つ上の兄…諸星彦(もろほしげん)に憧れよりも強い感情を抱いていた僕の想いは募るばかりで、『キョウダイでは結婚できない』という社会のルールを知ったときには、愕然(がくぜん)としたものだった。
母さんや父さんは、僕が何を言おうと本気にせず、それが恋愛感情ではないと思っていたようで…まさか僕が男――兄ちゃんを小学校、中学校以降…今に至るまで彼のことが好きだなんて知らないだろう。けれど、兄ちゃんは兄弟以上の気持ちに悩むこちらに気づいていたんだ。
それはそうだ。僕と兄ちゃんは、22歳と28歳になる今でも実家の子供部屋で共同生活を送っているのだから。
父さんや母さんは、僕が子供だったとき、少年漫画よりも少女漫画に興味があったことを知らないし、放課後サッカーや野球をするよりも、空想の世界に浸って人形遊びをする方が好きだったってことも知らない。2人には心配をかけまいと、必死で年相応の“男の子”を演じてきたつもりだった。
当然兄ちゃんにも僕は普通の男の子として映っていると思っていたのだが…ある日、友達に誘われて嫌々ながらも野球に出掛けようとしていた僕に、兄ちゃんが声を掛けてくれたんだ。『なぁ、蒼(あおい)。今日はお前の好きな“花花(はなはな)”の発売日だろ。俺、買ってきてやったから…帰ってきたら読めよ』と。
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