僕は兄ちゃんの花嫁~血の繋がりなんて関係ない!~ (Page 6)
「蒼、大丈夫か…?ヤリ過ぎたな…お前慣れてないってのに…2回も連続でイかせちまって――」
ボーッとしているこちらを見て、心配したのだろう。兄ちゃんはすっかり冷めてしまった湯から肩を抱きかかえるようにして僕を立ち上がらせ、脱衣所に置いてあったバスタオルで包んでくれた。
「…兄ちゃん。僕と兄ちゃんがこんな関係になって…いいのかな?好きだけど、不安だよ…父さんと母さんがなんて言うか…僕たちがHしたって、赤ちゃんができるワケじゃないし。――兄弟で、男同士でなんて気味悪がられるだけだよ。僕が兄ちゃんを惑(まど)わせたんだ…血縁鑑定を頼んでみたり、変な目で見てたから。兄ちゃんが彼女さんと結婚さえしてくれたら、僕だって諦めがついたのに」
「それは…お前の本心か?」
兄ちゃんが少しだけ屈んで、僕の頭を撫でてくれる。まるで僕のすべてを知っているような物言いだ。
「――本心じゃないよ。僕だって…兄ちゃんが僕のこと好きだって言ってくれて、Hの仕方だって教えてくれて…嬉しいよ」
「それならよかった。いいか?もちろん父さんと母さんは大事だよ。でも一番大切なのは――死んでも手放したくないのは…お前なんだよ、蒼。さっき言っただろ?俺はお前以外には勃たないって…どのみち、女と子作りなんて無理なんだ。それにお前、俺が結婚なんてしたら、今よりもっと辛い顔すんだろ…運よく俺に子供が産まれてみろ。いい叔父さんのフリして、無理するに決まってる。そろそろ、お互い素直になろうぜ?俺はお前だけを幸せにしたいんだ」
“こっちにおいで”と両手を広げた彼の胸に飛び込む。兄ちゃんは幼少期の頃のようにパジャマを着せてくれた。
「父さんと母さんには、俺から時間を掛けて説明するよ。俺が必要なのは、他の誰でもなく…蒼だってこと。2人に認められなくてもいい。道徳に反してるって石を投げられても構わない。俺はお前を愛している――もう少ししたら、俺らのことを誰も知らない場所で…性別なんかに囚われないトコで…結婚してくれないか?」
いつも物ごとをハッキリと口にする兄ちゃんも、このときばかりは照れたのか…モゴモゴと曖昧にそう言った。
これは、僕が憧れ続けたプロポーズに違いなかった。
*****
「アオイ~!今日はパパ、帰ってくる?マリアね、パパにお話ししたいことがたくさんあるの!」
「…マリア。その前にご飯食べようよ?僕、頑張って作ったんだよ~」
「アオイは、お料理ヘタだもん。パパのご飯が食べたいの!」
(参ったな…マリアは兄ちゃんの言うことしか聞かないんだから)
兄ちゃんがしてくれたプロポーズの通り、僕の大学卒業を期に2人で家を出た。今は娘マリアと共に異国の地で生活をしてるんだ。
父さんと母さんを前に、僕たちの気持ちをぶつけたときは、どうなるのか不安だったのだが…兄ちゃんが『理解しなくていい。ただ、俺はこの先もコイツ以外の誰かと一緒になる気はないよ。蒼を連れて家を出ることを許してください』と畳に額が擦れるほど頭を下げ、それを目の当たりにした両親は、泣いていた。
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