妄想男の悲劇 (Page 2)
圭一さんに変な人だと思われたのではないかとぐずぐず泣いた。
僕は昔から妄想癖があったけど、ここまで延々と妄想をしてしまうのは初めてだった。
それくらい大好きになった人。
でも想いを伝えることはできそうにない。
圭一さんは既婚者だからだ。
学生時代から長く付き合った人と結婚したと聞いた。
それでも構わない!略奪愛だ!という考えもあるだろうけど、本当にそんなことをしてしまったらどうなるかなんて簡単に想像が付く。
もうなにも考えたくない。
寝過ぎて頭が痛いけど寝て忘れようと再びベッドの中へ身体をねじ込み、目を閉じた。
*****
…遠くにインターホンの音が聞こえる。
「んっ…なにか頼んでたっけ…」
目を擦り、時計に目をやる。
午後11時。宅配便が来るには随分遅い時間帯だ。
インターホンのモニターを見ると心臓が止まるかと思った。
圭一さんだ。
なんで家に来たの?
通話ボタンを押す手が震える。
「あっ、居るんじゃん」
「えっ、えっ…」
「とりあえず上がらせて貰っていい?」
*****
「心配して来たんだよ? ほら、やっぱりご飯も食べてない」
どうやら僕を心配してわざわざ訪ねて来てくれたらしい。
「コンビニで買ったもので悪いけどちゃんと食べな?」
手渡されたコンビニ袋の中にはおにぎり2個とヨーグルト。それに栄養ドリンクが1本入っていた。
「あの…わざわざすみません…」
「いいよ。でもどうしたの?」
言葉に詰まってしまった。
そんな馬鹿正直になんて話せない。
「なんか悩みでもあるの? 疲れちゃった?」
優しくそう問われるだけでまたひっくり返りそうになる。
「なんでもないです…」
「なんでもないわけないじゃん」
気まずい空気が流れる。
「…すみません、今日はもう帰っていただけませんか?」
「どうして? 俺のことなんか嫌ってるよね?」
いや、違うんです。
むしろ大好きなんです。
「…すみません」
「俺は白井のこと好きだよ?」
…はい?今なんて言った?
「…え?」
「だから、俺は白井のこと好きだって」
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