捕食対象は愛されて

・作

僕、“スズメ”はタカさんから襲われていた際に救い出してくれた“カラスさん”と恋鳥同士。毎日のように巣内で、総排出腔と呼ばれるアナルを重ね合わせる鳥特有のセックスを通し、愛を確かめ合っている。しかし情事後、カラスさんが『覗いてきた』と興奮気味に語るラブホテル内での人間のセックスにヤキモキしてしまい…。

「んっ…大丈夫か?痛くはねぇか、スズメ?擦れすぎるようなら、角度変えっから…」

彼の漆黒の身体が満月に照らされ、やけに美しく見える。僕の上に跨った…いや“乗っかった”という表現が正しいだろうか…カラスさんは、鋭い嘴(くちばし)をこちらの額にコツンと当て、優しく問いかけてくれたのだ。

「痛くないって言ってるのに…。カラスさんが体重を掛けてくれないから…お尻の穴浮いちゃって、全然重ならないよ。カラスさんは僕に精子、出したくないの?」

僕――“スズメ”と彼“カラスさん”は、廃ビルの屋上…木製看板の裏側にある巣の中で、団子状に重なっていた。これを読んでいる人間の皆さんは知らなくてもいい情報かもしれないけど、僕たち鳥がHをする体位はひとつだけ…メス鳥の上にオス鳥が乗っかる、人間で例えると背面座位のみなんだ。

なぜなら、鳥の多くは “総排出腔(そうはいしゅつこう)”と呼ばれる排泄機能と生殖機能を兼ねた小さな穴があるだけで、ペニスやヴァギナをもたない。つまり、僕らは互いの総排出腔…アナルを擦り合わせてセックスするしか方法がないんだよ。

本来であれば、カラスは僕の天敵。彼らが腹ペコだったのなら、小さな僕はすぐに食べられちゃうんだから――それでも僕の上でゆっくり腰を揺らす、大好きな相手…カラスさんだけは特別だった。

「…ねぇ、カラスさん。それだけじゃ受精できないよ…?僕のこと、滅茶苦茶にしてほしいって、いつもお願いしているのに…っ!!」

彼から滴り落ちる精子を心待ちにしていた僕は、いつまでも優しいだけのカラスさんが不満で、ピーピーと捲(まく)し立てた。

「んなこと言って…お前、前に想像妊娠しちまって、大変だったろ!?俺、マジで卵産んじまうんじゃねぇかって心配で…」
「もう。僕はれっきとしたオス鳥なんだから、卵なんて産むわけないでしょ。あれはカラスさんが毎日おいしいごはん持ってきてくれるから、太っちゃっただけなの!それより早くちょうだい?カラスさんの…」

チュンッとカラスさんを見上げて、キスをすれば…彼は“仕方ねぇな”と言わんばかりに、精液で濡れたアナルを擦りつけるスピードを速めてくれた。僕はメスじゃないから、彼との交尾は無駄になるワケだけど――それでもカラスさんと身体を重ねられることが嬉しくてたまらなかった。

「――ぅくっ!!」
「あぁっ…カラス…さぁんっ!!」

煽れば煽るほどカラスさんも余裕を失くし、しがみつく力が強くなる。今は10月――鳥の繁殖期はすでに過ぎているんだけど、僕と彼は互いの気持ちが通じ合ってから、毎日のように巣内で交尾を繰り返しているのだ。

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