揉みほぐし~セラピストはペニスつき男の娘!?~ (Page 6)

「君の顧客になりたいんだ。別に身体が目的じゃない。金は払うから、120分話し相手にでもなってくれないか?愚痴だって聞くよ。そのために――君の名前が知りたい」

チヒロの気を引きたくて『すぐにまた来るからさ』とつけ足すと、俺の姿を映していた瞳が揺らぐのがわかった。

「…もう忘れちゃいました?チヒロですよぉ。何度も呼んでくれたのに…」
「それは源氏名なんだろう?君の本名が知りたいんだよ。…俺は外でも君に会いたい」

この返しにチヒロは、耳まで朱に染まっていた。

「…狸乃太郎(りのたろう)です。似合わないでしょう?」
「狸乃太郎か。君らしくていい名前じゃないか。俺は君が狸乃太郎と名乗っていようが、チヒロと名乗っていようが…例え女の子の恰好をしていなくたって次回も迷わず君を指名するよ。乳首やペニスまで揉まれるとは思ってもいなかったが…セラピストとしての素質があるからね」

*****

「ひゃうっ!秋梅さん…そこは舐めないでぇっ…イっちゃいますぅ…」
「狸乃太郎が怖がるからだろ?何がそんなに怖いのか、教えろよ」

数ヶ月が経過した今――。
俺が狸乃太郎を他の客に奪われないよう毎晩店へ通い詰めては散財する姿を哀(あわ)れに思ったのか彼は店を辞め、俺の家に居ついていたのだ。店では紳士ぶっていた俺の口調も砕けたものに変わっていたのだが…狸乃太郎はどうやら、野郎口調が好みらしい。『なんで最初からその言葉遣いじゃなかったんですかぁ!』と怒る始末であった。

こうして唇を使い、ビクビクと震え続ける彼のペニクリを甘噛みしてやる。俺からのフェラを最初こそ拒んでいた狸乃太郎も、俺が彼だけに行う愛情表現を気に入ってくれたようで、膝でこちらの顔を挟み、“もっと”とアピールするのがお決まりとなっていたのだが――。

今日の彼は俺が仕事から帰宅するなり『怖い』と言って、胸に飛び込んできたのである。

「秋梅さん…僕のこと拾ってくれましたけど、急に邪魔だって言いだすんじゃないかって不安で…」
「俺がどんだけ狸乃太郎にのめり込んでいるか知ってんだろ?俺がお前を独占しちまったばかりにお前、他の客が獲れなくて店を辞める羽目になったんだから…責任取らせてくれよ」

狸乃太郎の小さな身体を離したくなくて抱き寄せると、眉尻を下げていた彼もようやく満面の笑みを見せてくれた。

「僕の“狸乃太郎”としての人生はきっと、秋梅さんに捧げるためのモノだったんです。お店は辞めちゃいましたけど、毎晩マッサージしますから長生きしてくださいね」
「年寄り扱いすんなよ…。これから先もお前に貢ぐんだから、寿命も延びるさ」

俺らの唇が音を立てて触れ合うとき、カーテンの隙間から柔らかな日差しが降り注いだ。

Fin.

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