僕×M×彼氏
モデルみたいに格好いい彼氏の性癖に合わせて女装で待ち合わせに向かう太一。案の定逆ナンパされている和葉を見た太一はホテルに移動するなり鞄に忍ばせておいたリモコンのスイッチを入れて…?無自覚Mと無邪気Sの甘々な日常。
僕の彼氏は格好いい。
だからデートの待ち合わせはいつも人気の多い目立つところにしてる。
待ち合わせの30分前から近くに待機して、和葉はモテてるところを見るのが僕の趣味だ。
大体15分前には到着する和葉は、僕を待つ間スマホを弄ったりゲームをしたりするわけでもなく片腕を組んで小説を読んでいる。
何かの撮影かって言いたくなるくらい絵になっているから、5分もすれば女子が群がり始めるんだ。
声をかけられた和葉は人当たりのいい笑みを浮かべて丁寧に断り、待ち合わせの5分前になると読んでいた本を鞄にしまう。
本を読んでいると僕がきた時に待たせていたと思わせるからだろう。
僕たちよりちょっと大人なお姉さんに誘われてる和葉を見て、僕はひっそりと準備運動をした。
若い子はダメ元で声をかけるからすぐに散ってくれるけど、自分の魅力を知ってるお姉さま方は強気だ。
毛先をわざと跳ねさせて、血の巡りを良くさせる程度にその場で準備運動を済ませた俺は和葉の死角から飛び出していく。
「かーずはっごめんね、待たせちゃった?」
僕が飛びつくとふわりとシフォンのスカートが揺れる。ロングだから捲れるようなことはない、それでも和葉は心配そうに僕の腰に腕を回してこら、なんて控え目に叱るんだ。
女装した彼氏が飛びついたところを見た彼女たちは大体言葉を失って、なんだか気まずそうに散っていく。
和葉の性癖を疑われるんじゃないかって友達に言われたこともある、けど僕からすればそれがどうしたって感じ。
女装してひっつくだけで逃げて行ってくれるなら楽でいいじゃん。
僕の彼氏アピールをして満足したから普通に手を繋いで、この前話していたラブホテルに向かう前に和葉を見上げる。
視線に気づいた和葉が腰を曲げて顔を近付けてくれたから、耳元に手を添えてこっそりと問いかけた。
「僕があげたやつ、ちゃんと使ってくれてる?」
「もちろん使ってるよ」
*****
事前に予約を取ってくれていた和葉が僕の手を引いて人込みから離れ、飲み屋とホテルが入り交じる裏道を抜けていく。
辺りは賑やかだ。早い人は2件目の店を探して上機嫌で喋りながら歩いているし、ホテルの看板を見ていちゃつくカップルもちらほら見かける。
「太一、こっち。受付してくるから少し待ってて」
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