その声を独占させて、たくさん鳴いて (Page 2)
「今日も伊織さんち行って良いの?やった!」
「もちろんだよ。というか、もうほぼ同棲してるような感じじゃないか」
「ははっ!確かに!いっそ本当に住んじまおっかな〜」
「良いよ、僕としてもその方が嬉しい」
「マジで?!」
付き合い始めてから、ほとんど毎日のように彼を家に泊めている。
少しでも多くの時間を彼と過ごしたい、彼を独占していたいから。
僕の部屋に増えていく彼の私物。
そして、機嫌が良いときに聞こえてくる歌声。
もっと、多くの人にこの美しい声が届けばいいのにと思う反面、僕だけが独占してたいという思いが日々大きくなっていく。
「おーい、伊織さん!聞いてんのかよー?」
「…えっ?あ、ごめん…なんだっけ?」
「だーかーらー、伊織さんに曲作って欲しいなって」
「ぼ、僕が作った曲…?…え、本当に?僕の作曲でいいの?」
「はぁ?伊織さんが作った曲がいいんだって!…それとも、歌うのが俺じゃ嫌?」
「嫌なわけあるか!」
「っ!!お、おぉ…びっくりした…」
「あ、ごめん…僕、葵くんの声大好きだから…絶対歌って欲しい!」
夢にまで見た、自分の曲を葵くんが歌ってくれるという最高のご褒美。
あまりに嬉しくて僕は彼を思い切り抱き締めた。
「ずっとね、僕の作った曲で歌ってほしいなって思ってたんだ…僕の曲を歌って、デビューして…その先も、ずっと僕だけの曲を歌ってほしくて……あぁ、でも…みんなが葵くんの声に夢中になっちゃうのは妬ける…」
「ははっ、嫌なのか嬉しいのかどっちなんだよ」
「…どっちも…」
「伊織さん、案外独占欲強いよなー。…嬉しいけど」
彼の可愛らしい言葉と、普段他の人には無愛想なのに僕だけに見せてくれる笑顔に、たまらなく愛しさと更なる独占欲が込み上げる。
僕は本能のまま彼を力強く抱き締め、ソファに押し倒すと噛み付くように唇を重ねた。
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