可愛い僕の愛しい元彼 (Page 2)
恭弥と付き合っていたのは、高校の頃だ。
男子校でお姫様扱いされていた僕に、恭弥が突然告白してきた。それまで、一度も喋ったことはなかった。
当時から恭弥の美しさは目を引くものがあったし、学校中の誰もが知っているイケメンに告白されたという不思議な優越感もあった。
それに、僕は男が好きだった。
僕は恭弥が初めての恋人だった。毎日一緒にお弁当を食べたり、恭弥の部活が終わるのを待って二人で下校したりするのは楽しかった。
高校卒業を機に別れるまで、僕たちの交際は続いた。
*****
はっ、と耳元で吐息が聞こえる。僕は目の前の熱い体から少しでも逃れようと恭弥の胸を押した。
三人で平和にカレーを食べ終えたあと、役目を終えたとばかりに日高さんは帰って行った。俺の部屋に来てくれないか。そう言われて、なぜか僕は断れなかった。
「瑠璃」
恭弥の、低い声が僕の名前を呼ぶ。久しぶりの感覚だった。
「きょう、や」
僕はうつむいて目を逸らす。それをとがめるみたいな声で恭弥がまた僕を呼んだ。
「こっち向いてくれないか」
優しくそう請われて、僕は仕方なく、という体で恭弥のことを見る。見る、というより、見つめる、というほうが正しかったかもしれない。
目を合わせた瞬間に、恭弥の美しさに身がすくんだ。
「なんで今さら?」
僕がそうたずねると、恭弥はきれいな形をした眉毛を下げて「ごめん」と呟いた。
「瑠璃のこと、ずっと好きだったんだ」
恭弥の大きな手が僕の頬を覆う。美しい顔がそっと近づいてきて、恭弥が目を伏せる。僕はそれを見つめていた。
恭弥の、ぬるい唇が僕のそれに重なった。
「なんで?」
僕の言葉に、恭弥がまた「ごめん」と呟く。たまらない気持ちになって、恭弥が着ていた白いTシャツの胸元を掴んで引き寄せた。
「瑠璃」
恭弥が口にした僕の名前を、飲み込むみたいにしてキスをする。恭弥とキスをするのは、今日が初めてだった。
「僕のこと、振ったくせに」
「振ったのは瑠璃だろ」
違うよ、と僕は言う。
「恭弥が、可愛い可愛いって言ってきて、それなのに、キスどころか手も繋がないから」
僕はぐしゃりと顔を歪ませた。恭弥の顔が涙で滲んでみえなくなる。
「本当は女の子のほうが、いいんじゃないかって思ったんだ。だから、別れたいって言った」
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