叔父さんが好きです (Page 2)
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「いらっしゃいませ」
「こんにちは、今日もこれを頼む」
またお金を預けに来てくれた。
俺がまだこの店に来ているかわからないのに。
俺は店員としてあの人と話すようになっていた。
最後に会ったのは12歳の時だし、俺とは気が付いていないらしい。
他の客が話しているのを聞いたが、この人はいわゆる【極道】、その道の人らしい。
子どものころには教えられなかったし、気が付かなかった。
関東を仕切るかなり大きな組の若頭らしい。
「…とてもそうは見えないのにな」
「何か言ったか?」
「いえ、よろしかったら今日は店でゆっくりしていかれませんか?」
まだこの人といたかった、極道だろうが何だろうが、店員と客としてでかまわないから。
「そうだな、そうするよ、何かおすすめはあるかな?」
「プリンアラモードがおすすめですよ」
「…プリンアラモードか、じゃあそれを頼むよ」
「かしこまりました」
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「お待たせいたしました」
「ありがとう、兄ちゃんいくつだ?」
「20です」
「そうか、20か」
「どうされましたか」
「いや、昔かわいがっていた子がいてな、兄の子どもなんだが、もう8年会っていない。今は君と同い年になっているはずだ」
「っ、どうして会わなくなったんですか?」
「いろいろあってな…、ごめんな、こんな話しちまって」
「いえ…」
何か隠しているように感じた。
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「あの人来てたわね、自分だって言わなくていいの?」
「あ、オーナー、いいんです。それより、あの人がお金を預けるようになってから何か言ってませんでしたか?俺のこととか」
「言わないように言われていたんだけどね」
「何ですか」
「迷惑がかかるからって、教えてくれたわ」
「迷惑?」
話を聞くと、自分は極道の人間で、跡を継ぐはずの兄が駆け落ちをし、自分が継ぐことになり兄を憎んでいた半面、家に縛られずに自由に生きる兄がうらやましかった。
葬式で俺に声をかけたのも同情心だったが、いつからか本当の自分の子どものように大切になり、極道の自分と一緒にいることはよくないと俺から離れた。
「子どものように…」
俺はあなたで抜いたこともあるんですよ、なんて言ったらどんな顔するのかな。
きっと軽蔑するだろう。
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