神様の言う通り

・作

幼い頃から霊感が強い宇賀神泰人(うがじんやすと)は、就職活動に行き詰まっている大学4年生。周囲の友人たちがどんどん内定を取っていくなか、泰人だけが取り残され焦る日々を送っていた。ある日の面接帰り、たまたま寄った神社でお祈りをしていると謎の男が現れ思いがけない出来事が起こる。

俺の名前は宇賀神泰人(うがじんやすと)。
なんとなくありがたいようなこの名字は、人生で特に役に立ったことはない。

面接のときに必ず「へぇ〜珍しい名字だね」と言われるがそれが1番盛り上がる瞬間であり、あとは大して面白い話もできずに終了。
もともとそんなにコミュニケーションを取るのが得意ではない俺に、初めて会う大人と話すのは難易度が高すぎる。

絶対名前負けしてる…

みんな、珍しい名字だからと言って面白いキャラを期待しているのかもしれない。
実際の俺は、ややコミュ障でやや根暗な普通の大学生だ。

「あ〜もう、暑いっ…こんな中スーツ着て就活してるのなんて俺だけだよ…」

人通りのない、駅から離れた道路の木陰で泰人はえり元のネクタイを緩めながら思わず悪態をついた。

大学4年の夏。
周りの学生達は就活も終え最後の思い出作りに旅行やバイトにいそしむなか、泰人は未だにもらえない内定を求めて今日も都内の某企業に面接に来ていた。

一応エントリーシートや履歴書までは通る。
だが、その先のグループディスカッションや面接になると上手く話せずつまずいてしまうのだ。

「はぁ…面接がない会社に就職したい…」

泰人が2回目の独り言を呟くと、ふいに強めの風が吹いた。

なんとなく目線を横にやると、今まで歩いてきた木陰道の先に、さらに細くなった道がある。
どこかの家に繋がってるのかとも思えるような小さい道だったが、木々が連なり涼しい風がそちらに吹くのに釣られてなんとなくその小道に入ってみる。

あれ、鳥居がある…神社??

泰人はその先で、古ぼけた小さい鳥居を見つけた。
こんなところに…?
目立たない小道の先、ひっそりと存在する神社。
ちゃんと管理されていないのか、賽銭箱もかなりボロボロだ。

「宇賀神」なんて名字だけど、神様なんて信じたことないし信仰心もない。

それでも、泰人は今日この場所に辿り着いたことになんだか縁を感じ、お参りをしてみることにした。

これだけ古いんだから逆にすごく昔からあるありがたい神社なのかも。
そう思いながら、手前にあるだいぶ年季の入ったこま犬の像を触りあやかってみた。

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