妄想男の悲劇
白井(しらい)には片思い歴3年の圭一(けいいち)という同じ職場に勤める男性が居る。だが圭一は既婚者だ。元々白井には妄想癖があり、ある日夢で圭一にあれこれされるという夢を見てしまう。その妄想がエスカレートしてしまい――。
「あっ…んっ…」
大好きな彼とのセックス。こんなに幸せなことはなかった。
終電が迫る誰も居ないオフィス。
ネクタイで目隠しをされ視界を遮られる。
乳首をつねられ、甘噛みされる。
次はどんなことをしてくれるのだろうと、ときめきが止まらない。
…それは違う。
彼が大好きだから。彼にだったら手を握られただけでもイってしまいそうになる。
「乳首だけでココ…凄いね?」
「嫌だっ…焦らさないでよ…」
圭一は笑いながら「俺のことイかせて?」と半勃ちの下半身を口に付けてくる。
僕は喜んでソレを口に咥える。
「我慢できなくて会社でヤっちゃうとか…」
「だってぇ…圭一のこと大好きなんだもん…」
「はは、可愛い。口でするの上手くなったね…」
そう誉められただけで心臓が張り裂けそうになる。
「あっ、でる…!」
次の瞬間、口内に広がる独特な味と匂い。
「んんっ…あっ…んっ…んぐっ…」
僕はこうやって口に出された後、圭一の味をじっくり味わうのがたまらなく好きなのだ。
「…また飲んじゃったの?」
*****
遠くに目覚まし時計の音が聞こえる。
僕はけたたましく鳴り響く目覚まし時計のスイッチをオフにし、減なりとした気分になる。
…あれは夢だったのか。
ふと下半身に違和感を覚え、パンツの中を覗き込む。
夢精しちゃってる…
かぁっと顔に熱が集まる。
エッチな夢を見ただけでイっちゃうなんて…
余りの恥ずかしさに慌てて新しいパンツに履き替え、歯を磨き顔を洗ってその日は朝食も食べずに家を出た。
*****
「白井さん、おはようございます」
心臓がギクリとする。
この人が夢に出てくるほど大好きな圭一さんだ。
もう片想い歴3年になる。
「あっ、えっ…おはようございます…」
「…? 顔真っ赤だよ? 体調悪い?」
「ちっ…違いますっ…」
「いやいや、熱あるんじゃないの?」
ふっ、と僕のおでこに手を当てられる。
その瞬間、僕は情けない悲鳴を上げ、その場にひっくり返ってしまった。
ざわざわと周囲の人間が慌てているのが分かる。
一生懸命釈明しようとするが、言葉が出てこない。
…もう、穴があったら入りたい。
*****
「もう会社行きたくない…」
その後、僕は強制的に自宅へ帰された。
精神的なものだと思われたらしい。
…まあ、あながち間違いではないが。
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