叔父さんが好きです

・作

子どものころ両親が亡くなり孤独だったイツキのそばにいたのは兄の様に慕っていた父の弟だった。しかしある時からユキオはイツキの前に姿を現さなくなる。大人になりこの感情が恋心だと気づき、ユキオと再会するが気持ちは伝えるべきではないと考えていた。しかし、ある日樹のバイト先でユキオの無防備な姿を見て抑えていた気持ちが大きく揺れる。

8歳の時両親が交通事故で死んだ。
しかし現実が受け入れられず葬式の最中も泣くことができなかった。

「ボウズ、悲しくないのか」

「…っ」

「俺は悲しい、一人で泣くのは恥ずかしいから一緒に泣いてくれ」

そう言って悔しそうに唇を噛みしめながらこらえるように泣いているこの人を見て、自分も涙が止まらなくなった。

「おじさんは誰?僕のこと知ってるの?」

「知ってるよ、おじさんはイツキのお父さんの弟だ」

父方の親戚とは会ったことがなく、兄弟がいたことも知らなかった。

「お腹空かないか?何か食いたいものあるか?」

「…プリンアラモード」

「プリン?」

「お父さんたちとよく行ったお店があるんだ」

「よし、じゃあそこに行こうか」

「イツキ、お前はこれから施設で暮らすことになる、でもたまに会いに行くからまたこの店に来ような」

それから本当にあの人はたまに施設に来ては俺をあの店に連れて行ってくれた。

両親が死んで、誰も自分を見ていてくれていないようで寂しかったが、あの人といるときはそれを感じることはなく、いつからか自分の居場所のように感じていた。

たまに会って一緒にプリンアラモード食べに行く、そんな生活が4年続いた。

しかし、俺が12歳になった頃、パタリとあの人は会いに来なくなった。

連絡先も住んでいる場所も知らない。
あの人に会いたくて探すように店に行き、何時間も何日も店の前で待った。

「あなた、イツキくんよね?いつもプリンアラモード頼んでくれる」

「はい」

「あなたがいつも一緒に来ていた人からお金預かっているの、あなたが来たらプリンアラモード食べさせてあげてくれって」

「えっ」

話を聞くと、仕事の都合でもう一緒に来ることはできなくなってしまったと。お金を預かることはできないと断ったが、あまりにも必死に頼むので聞き入れたとのことだった。

何回も店に通った。会うことはできなかったが、あの人は時折店に来てお金を預けていくらしい。

会えない事情はあっても、俺のことを忘れないでくれている、それがとても嬉しかった。

それから一度もあの人と会うことがないまま俺は20歳になった。
会えなくなって、年の離れた兄を慕っていると思っていたこの感情は恋心なのだと気がついた。

今でもあの人はたまに来てお金を預けていくらしい。

店で働けばいつか会えるかもしれないと思い、募集していなかったが頼み込んでアルバイトとして雇ってもらった。
我ながらすごい執念だと思う。

そして店で働き始めて半年経ったころ、あの人は来た。

会いたくて、会いたくて仕方がなかった、しかし自分だと伝える勇気はなかった。
オーナーにも俺のことは言わないようにしてもらった。
あの人の中の俺は子どものままで、その子どもが大きくなり自分にこんな感情を抱いていると知られたらどうなるだろうか。

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