火遊びにハマる夜 (Page 2)

 酔った勢いもあってか、案外軽く誘いに乗った明人と下着姿でベッドの上でもつれ合う。

 見た目の雄々しさに反して、明人のキスは優しかった。

「んっ」

 重ねた唇をついばんで、互いに伸ばした舌先を絡め、歯列を割って口の中まで舐め合った。

 そのキスは焦れったさを感じるほどに丁寧で、けれど着実に識の劣情を煽った。

 こんなに丁寧なキスは、いつぶりだろうか…。

「は、ぁ…っ、ぁっ」

 アルコールを含んだ明人の吐息を直接吹き込まれ、熱い舌先が頬の内側を突いた。

 識を組み敷く明人の手がやや汗ばんだ額に添えられ、額から頭頂部にかけてを撫でてきた。

「触ってもいいっすか?」

 離れた唇が遠慮がちに問う。

 好きにしろ、と識は目線を反らして頷いた。

 明人は片腕で自身の体重を支えて体勢を整えたあと、髪を撫でていた手を識の下半身に伸ばしてきた。

「もう、勃ってきてる…」

「…ぁ…、お前こそ、当たってんだよ」

 下着を持ち上げる昂りを撫でられ、息を詰めて反論する。

 識の太ももに時折触れる塊は明人の熱で、識も手を伸ばしソコをくるむように触れた。

 下着の上から互いの欲望を撫で合い、軽くキスを交わす。

「ん、ぁ…はぁ…」

 掌全体で明人の男性器を撫でさすりながら、識は目を細めた。

 恍惚と喘ぐのは明人の手から与えられる快感によるものの他に、期待値の高さも含まれていた。

 大きい――と、識は密かに舌なめずりをした。

 直接目にしなくても分かる。

 明人の男性器はその体躯と同様に平均をはるかに上回っていた。

 指先から伝わる硬度も角度も、恋人の…いや、過去に識が関係を持った男たちとは比べ物にならない。

 早く触りたい、そして貫いてほしい――と、識は明人の下着の中に指を忍ばせた。

「――慣れてんすね」

 キスの合間に明人が言う。

 識は首を傾け、唇を頬に押し当てて「それなりにね」と答えた。

「お前は? 男抱くのは初めて?」

 恥骨からさらに下、生えそろう陰毛を指に絡めて悪戯に引っ張り、明人の顔をチラリと見ながら聞き返す。

「――っ、一度だけ」

 どっちもイケます、と息を詰まらせ答えた明人を見ながら識は硬く張り詰めた陰茎に指を絡めた。

 どうやら男同士のセックスについて教えてやる必要はなさそうだ。

「あ…待…っ」

 直に握り込んだ明人の昂りを上下に扱こうとしたときだった。

 不意に胸元に触れた手が識の乳首を掠めた。つい、肌を跳ねさせ、甘い声を漏らす。

「お、その声、可愛い…」

「――バカっ」

 セックスの最中に可愛いなんて言われたのは、久しぶりだった。

 恥じらいを隠すために悪態を吐く。

 明人は唇を識の首元まで移動させ、耳元から首筋にかけて唇を押し当ててついばんできた。

 手はそれぞれに性器と乳首に触れ、そのどちらもを巧みに指を動かしては識の欲情を高めていく。

「は、ぁ…、んぁっ」

 識はたまらずに明人の身体から手を離し、すがるように肩に抱き着いた。

 乳首を指で捏ねられる度に昂りは熱を持ち、先端からは透明な粘液が滲む。

「もう、濡れて…やらしすぎ…」

 下着の上からグリグリと先端のくぼみを押し潰すようにされ、布地を濡らす。

「ぅ、ぁ…脱ぐ…から…」

 替えのパンツなど持っていない。汚す前に脱ぎたいと訴えるも、明人は手にした識の欲望を離そうとはしなかった。

「あ、んんっ、バカ、やめろって…」

 強引とまではいかないが、能動的に責められるのはいつぶりだろうか。

 いつも受け身な恋人とのセックスと比べてしまい、失礼だと思う前に興奮を煽られた。

「あっ、あ…」

 首筋をついばんでいた明人の唇が徐々に下方へと向かい、胸の上で留まった。

 指で捏ね回されていた乳首に、今度は濡れた舌が這う。

 芯を持ち尖る乳首を舌先で転がされ、しゃぶられると得も言われぬ快楽が全身へと拡がった。

「ん、ぁ…気持ち、イイ…」

 丁寧に乳首を這う舌に自然と腰がくねり、息が上がる。

 これまでの言動を見るに、明人はどうやら前戯に時間をかけるタイプのようだ。

 乳首をしゃぶっては吸い、舐め上げる。もう片方の乳首も同様に責め立てられ、識の男性器は嵩(かさ)を増した。

 腰を揺らし、背をしならせて喘ぐ。

「次、どこ弄ってほしい?」

 快楽の波に飲まれつつある識に対し、やや調子に乗った口調で明人が訊いてきた。

「下、もう…イキそ…ぁっ、ん…」

 言い終える前に爆発寸前の昂りを強く掴まれ、識は身をすくめた。

「腰、あげて…」

 一度昂りから離れた手が下着の穿き口にかかる。言われた通りに腰を持ち上げると、一気に膝まで下ろされた。

 膝回りに留まる布地はそのままに、今度は直に指が絡みつく。

「ぁ、あ…ソコ、擦って…」

 待ち望んでいた直接的な刺激に、識の熱は脈打ち先端から蜜を溢す。

「すっげーガチガチっすね…それに、濡れてて余計やらしい…」

「い、いちいち言うなっ」

 明人は乳首を舐りながら識の熱を上下に扱いてきた。

 先端から竿にかけて垂れ落ちる蜜により、クチュクチュと卑猥な水音が立つ。

 元より暴発寸前ではあったが、こうして扱かれていくうちに少しずつ高みに上り詰めていく。

 挿入を前にして、誰かの手で絶頂に追いやられたのは、いつが最後だったか。

 ――そういや、あいつは触ってくんないんだよな――。

 絶頂を前にして、ふと、思い出すのは順番通りに触れる恋人の手だった。

 キスをして、乳首を少しだけ弄って、識が勃起したのを見てからフェラを要求。

 識のフェラで勃起したあとは後ろを少し慣らして、最初は騎乗位、その後にバック、それで識がイクこともあれば、相手が先にイってそれでおしまいというときがほとんどだ。

 疲れているんだから、仕方がない…そう何度も自分に言い聞かせてきたが…。

「あ、ぁ、イキそ…ぁっ」

「あっ、少し待ってて」

 識が限界を訴えた直後に、明人は手を離してしまった。

「なん…ひぁっ、なに…」

 上半身を浮かせた明人は、識の下半身に向けて後退っていく。

 識は文句を言い掛けたものの、すぐに戸惑いの声をあげた。

 蜜に濡れた識の熱を明人はなんの迷いもなく、咥え込んでしまった。

 温かく湿った口腔で包まれ、舌が絡んで唇で扱かれる。

「あっ、あっ、や…っ、んんっ」

 同時に腰や双丘をいやらしく撫でまわされ、意思とは関係なしいに腰が揺れ、識はあっけなく熱を放った。

 ほんの一瞬だけ力の籠った下腹部は、脈動が収まったあとにすぐに弛緩(しかん)する。

 識は荒い息を吐きながら、ベッドに身体を沈めた。

 ゴクンっと、喉を鳴らす音に続いて一時的に熱を失った性器は離された。

「は、マジ、ありえねえ…」

「…ハハッ、どんな味すんのか、興味本位で…」

「クッソまずいだろ?」

「…そうっすね。けど識さん可愛かったから…」

 再度識に覆い被さり覗き込んでくる顔を見返して、識は目を細めた。

「俺も、舐めてやろうか?」

 肘を突いて上半身を僅かに浮かせ、もう片方の手を明人の下半身に伸ばす。

 指先に触れるのは薄い布地の下で熱く硬く存在を主張するもの…その先端を指で突いて、舌なめずりをして見せるが…。

「い、いえ…それよりも…」

 一瞬だけ明人はたじろいだ。

 目元を染めて首を横に振り識の申し出を断って、脱ぎかけの識の下着をさらに下げて、「もう、いいっすか?」と訊いてきた。

「――好きにしろよ」

 やり方はわかるな? と脱がされた下着が脇に放られるのを見て、識は自ら脚を広げた。

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