はじめてをいただきますっ! (Page 2)
考えあぐねていると、綾人がうつむいたまま沈黙を破った。
「オレ、…実は…広瀬さんのことずっと前から見てて…その…好き、なんですあなたのこと…」
「……ってハイ?マジでえ、あ、そ、そうだったの!?」
――って、この展開は考えてなかったぞ!どーすんだどーすんだ!
「ずっと、ずっとあなたのことを見てて、ようやく昨日初めて隣に座れて、オレすごく嬉しかったんです!酔っ払ったあなたはオレん家が近所だって言ったら、家で飲み直しだなんていうから、嬉しくて、そんで、連れてきて、こんな、こんな……それなのにっ〜〜〜う〜〜…オレ初めてだったのに〜」
せきを切ったように一気にまくし立てると、綾人は今度こそ本当に泣き出してしまった。
――ヤバい、これはヤバいぞ。オレめっちゃ傷つけちゃってない?初めてって、アレだよな?やっちまったってワケでしょ?
「いや、そんな…でも、そうだなまずは知らなかったとはいえ逃げ出すような真似してごめん、申し訳ない」
「………」
綾人は黙ったままうつむいている。
「うん、こういうのはよくなかった。男同士とか関係ないよな。すまない、ごめんなさい」
「…責任」
「…え?」
「責任とってください」
「……といいますと…?」
「付き合ってください、なんて重いことは言いません。もう一度だけ、あなたが欲しいです」
――いや〜斜め上の展開キタね!これ。どう答えるのが正解なのかな!
アハハと乾いた笑さえ出そうな俺の返事を待たずに、綾人は続けてこう言った。
「…やっぱりダメですかね」
「いや、そんなコトは…いってないよ?」
明らかに落ち込んだ様子の綾人は、よく見れば少し震えているようだった。
――こいつめっちゃ緊張してんのか?こんな必死になるほどオレのこと好きだっていうこと?…なんか悪くないな、うん、悪くない。
よくも悪くもあまり深く考えない性格の拓也は、あっという間にほだされてやることに決めてしまった。
「まあ、もう、1回やっちゃってるなら2回も3回も変わんないよな、いいよ!」
「…本当ですか」
「俺に二言はないっ!」
「では、…さっそく失礼して…」
「わっ、と、おわっ?」
先程までの緊張した様子から一転、掴んだままだった腕をそのままに、綾人は拓也を押し倒し馬乗りになった。
「はっ?え、何?」
「約束、ちゃんと守ってくださいね」
ぐっと引いた腕を頭上に押しとどめ、鼻先が当たるほど顔を寄せて綾人はにっこりと笑った。
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