新婚さんごっこ…なんてするか!!!
大学生のハルとシュウは最近同棲を始めたばかり。好きな人と一緒に居られることに浮き足だっているハルだったが、帰宅したシュウから思いがけないお願いをされる。はじめのうちは断るハルだったが、相手の押しに根負けしてしまい――
「ただいまー」
「おかえりー」
こんな普通の会話をしただけなのに、ニヤニヤしちゃうオレはだいぶ浮かれまくってるんだと思う。
でも、オレよりもっと浮かれた奴がいることをすぐに思い知ることになる。
「ねえねえ!!!ハル!これ着てみてよ!!!」
帰って早々何を…と玄関の方を見ると、フリルのたっぷりついた白いエプロンを自慢げに掲げる恋人が立っていた。
「え…………何、それ?」
「え?エプロンだけど??」
「いや!それは見てわかるわ!!!何でそんなん持ってんだよ!?」
「んー?今度の学祭で使うんだけど、絶対ハルが着たら似合うと思って!!」
ちょっと借りてきた!!とドヤ顔を決められてもこっちは、はい喜んで!とはならない訳で。
むしろ…
「そんなん持ってこられても、着るわけないだろ…」
ため息と一緒に丁重にお断りの言葉を吐けば、ずすいとエプロンが眼前に近づいてきた。
「えーーー!!せっかく借りてきたし一回だけ!!お願いっ!!!!」
「嫌だって言ってんだろーが!」
しばらく「お願い!」「嫌だ!」の不毛なキャッチボールが続いたが、向こうが作戦を変えてきた。
「同棲始めてさぁ…帰ってきたらハルがおかえりって言ってくれるのが、なんか新婚さんみたいだなーとか思ってさぁ…これ着て言ってもらえたらもっと嬉しいなぁとか思ったんだけどなぁ…」
部屋の隅で三角座りをしながら
「俺だけだったのかぁ…」とか
「絶対可愛いのに…」とか嘆き始めた。
はぁ…大変にめんどくさい。
が、こうなったコイツはテコでも動かない…
それに『新婚さんみたい…』の辺りはオレもちょっと共感できる節が少なからず…ある。
オレはさっきよりも深ーーいため息を吐き出した。
「わかったよ…でも!!!一回だけな!」
「わぁーーい!!ありがとう!ハル!!大好き!!」
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