自慰玩具
残業続きで昂った体を、会社のトイレで慰めていた「田中優(スグル)」。タイミング悪くいけ好かない後輩「榊原涼太(リョウタ)」に見つかってしまう。社会人生命が絶体絶命のなか、涼太から提案されたのは視姦プレイで――?
「っ――!」
とろけるような刺激に思わず声を上げそうになり、現状を思い出して奥歯をかみしめた。
現在、職場のトイレの個室。
テキトーな同僚からテキトーに手渡されたオナホを使うときが来るとは、夢にも思わなかった。
残業が続き、3日は自宅に帰れていない優は、年齢相応の性欲を発散すべくトイレにこもっている。
「ふ、ぁ…!」
ペニスを包む刺激は、普段ならこんなにひどいものでもないだろう。
だが自慰すら満足にさせてくれないこの現状は、優の感度を爆上げしていた。
「さ、っさと戻らねーと…」
優はちらりと腕時計に視線を向けて、大きなため息を吐いた。
時刻は夜の21時を過ぎたところ。
はやく抜いて仕事に戻らなくては、今日も終電を逃してしまいかねないし、あのいけ好かない後輩が怪しむかもしれない。
職場のトイレで抜いていることがバレるのはあんまりよろしくない。社会通念上とても。
「んん、っ――」
優はさくっと抜いてしまおうと、オナホを動かすスピードを上げた。
腰がとけるような熱と快感が、頭を真っ白に染め上げていく。
もっと欲しい。あと少しで解放できる。
欲望が赴(おもむ)くまま腰をくねらせてカリ先をオナホにこすれば、限界だといわんばかりに太ももが震え始めた。
ガタ、キィイ
「っ」
「な……にしてんすか」
唐突にトイレの戸が開いて固まる。
顔を上げれば今一番会いたくない相手…いけ好かない後輩こと榊原涼太と視線が合った。
「あ、えっ…その」
「…ふぅん」
涼太は何を思ったか、おもむろに後ろポケットから携帯を取り出し、カメラをこちらに向ける。
カシャ
「なに、して…」
「課長の秘密を撮ってんス」
驚きすぎて語彙力(ごいりょく)を失った優に、涼太は飄々(ひょうひょう)と返した。
だが彼の表情は、いまだかつて見たことがないほど輝いていた。
涼太は嬉しそうに目を細めて、値踏みするような視線をこちらへ向けてくる。
「さぁ、どうします?」
涼太は携帯を優に見せつけながら問いかける。
「どうし、てほしい」
優はかすれた声でそう返す。人生終わった。最悪だ。
会社の残業代をもらいながら自慰に浸る変態野郎として、社会的信用を失墜(しっつい)し人生を棒に振るんだ…。
「そうですねぇ…じゃあ是非続きをお願いします」
「――は?」
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