文化祭の出し物でメイド服着たらお仕置きされた (Page 2)
「…拓人?お前何してるんだ?」
「っ!?ゆ、勇…!?」
ぶらぶらと人目を気にしながら廊下を歩いていると、後ろから声をかけられる。聞き覚えがありすぎるその声にギギギと音を立てながら振り向くと、そこには想像通りの男が立っていた。
彼、勇は他学部の同級生であり…俺の、恋人である。
「いやあの、これはだな…学科の出し物で…け、けして俺の趣味じゃないぞ!!?」
「……」
「おい、ちょ!?勇!!?どこ行くんだよ!!」
言い訳を重ねている間にも、看板を持っていない方の腕を掴まれ、人気のない方へとズンズン進んでいく。
どれだけ声をかけても止まってはくれなくて、やっと止まったときには立ち入り禁止の場所にある空き教室へと放り込まれていた。
ピシャリ、と音を立てて扉が閉められたかと思うと流れのまま鍵をかけられる。
「…おっ、お前、なんで怒ってるんだよ…」
「……わからないのか?」
そこでようやく俺は彼の顔を正面から見た。暗闇の中でもわかるほど眉間に皺をよせ、苛立ちを隠そうともしない彼におびえながらも声をかければ、ドンッと机に押し倒されて低い声で耳元に囁かれる。
「自分の恋人が、男を誘惑するような服を着て出歩いてる姿を見て、何も思わないとでも?」
「………はぁ?」
ぽかんとあっけに取られて口を開く。
確かに俺とコイツは付き合っているし、俺が女ならば『恋人の可愛い姿を見せたくない』などの独占欲があってもおかしくない。
けれど俺は男で、着ているメイド服は1ミリも似合っちゃいなかった。
体つきこそ隠せているものの、骨格は見事に男のものだし、顔なんて化粧すらしてないから酷いもんだ。
なのに何故、俺は怒られているんだろうか??
「これでどうやって誘惑するんだよ。しかも男って…」
「いーやしてる。俺が興奮してるんだから他の奴だって拓人のことエロい目で見てるに決まってる」
それは偏見というやつではなかろうか?
少なくともこの姿の俺に興奮するのはお前くらいだよなんて乾いた笑いが口から漏れる。
次の瞬間、開けていた口に噛みつかれるような口付けをされた。
「むっ!??」
「ふっ…はぁ……ん…」
まるで呼吸ごと飲み込むような深い、深いキスに酸素が足りなくなるのはすぐだった。
絡め取られる舌も、水音を立てる唾液も、全て興奮を得るためのスパイスになっていく。
ようやく解放されたときには、すっかり俺自身も反応してしまい、黒いスカートを一部盛り上げていた。
「…俺が1番怒っているのは、拓人がメイド服を着ることを俺に言わなかったことだ」
――だから今からその罰として、お仕置きしてやる
ギラギラと欲を隠そうともしない瞳に見つめられて、身体の奥がキュンと鳴った…ような気がした。
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