ウリ専ボーイのレイ君 (Page 2)

別にお金に困ってるわけじゃない。
将来、奨学金を返さなくてはいけないわけでもない。

…ただ、なんとなく。

ただ、なんとなくおっさん達のアレをしゃぶってるだけなんだ。

*****

「…次の講義は…古典、か」

古典の講義がある講義室までは少し距離がある。
建物を繋ぐ連絡通路が長く、軽く歩いても7分は掛かる。
ふと左腕の腕時計を見ると講義が始まるまでギリギリといったところだ。

「…やばい」

そう思った僕は連絡通路を全力疾走した。

「あの教授、1分でも過ぎたら鍵掛けるからな…」

とにかく講義に間に合わせることしか頭になかった。

後もう少しのところだった。

「ってぇ! いてぇなぁ…」

僕は向かってきた男子学生と思い切り衝突し、前のめりに転んでしまった。
それと共に通路いっぱいに散らばる教科書やノート。

「ひっ…すみません…っ!」

慌てて通路にまき散らしてしまった教科書やノートをかき集める。
…恥ずかしい。一刻も早くその場から立ち去りたい。

「んあ? もしかして君ってレイ君?」

一瞬耳を疑ったが、レイなんて名前は今の時代、本名の人が居てもおかしくはない。

「いいえ、違います」

「いや、違くないね。君の源氏名はレイだろ?」

その人の顔を見上げて改めてよく見てみると、どう見ても昨日の出禁客だった。
そう気が付いたときには声にならない小さな悲鳴をあげてしまった。

同じ大学の学生だったの…?

「あー、やっぱり。昨日はごめんねー乱暴にしちゃって」

口ではそう言っているが笑い交じりで本当にそう思っているようには見えない。

「っていうか、俺のこと知らないの?」

「…知りません」

「俺は園崎悠馬。園崎製菓はさすがに知ってるよね? 俺、そこの御曹司」

そっ、園崎製菓なんて誰もが知る菓子メーカーじゃないか。
園崎製菓のお菓子を食べたことがない人を探す方が難しいくらいだ。

「みんな俺のこと御曹司さま、って呼ぶから知らない人なんて居ないと思ってたよ」

意地の悪い口調で彼は言った。

「…そうですか」

と、答えたのとほぼ同時に講義開始のチャイムが鳴り響く。
昨日に続いてなんてついてないんだ…

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