すれ違いの愛
雅紀(まさき)は大学生の恋人、春(はる)と同棲中。春には女装癖があり可愛いものが大好きで心はオネエ。だが欲が強く”セックスは毎週金曜日”だけという約束のもと生活している。雅紀は雅紀なりの愛情を持って接していたが――
「ああ、うぅぅーん! 見てぇん! 可愛いでしょぉ?」
上半身裸に女ものの淡いピンクのフリフリTバックショーツを履いた俺の彼…
春が言った。
仕事帰りでドアを開けた瞬間、待ち構えてた春にこう言われたらたまったもんじゃない。
しかもそのTバックショーツは、いつもわざとサイズの小さいものを選んでくるものだから下半身が収まり切らず、勃起した男性器の先が見えている。
「あー、はいはい。でも今日は金曜日じゃないよ」
「えぇーん! でも私ぃ雅紀に見てもらいたくってぇ…」
「春のパンツ好きはわかったから。でも決まりは守ってくれ。オナニーは好きにしてくれてかまわない。でも俺とセックスするのは金曜日だけにしてくれ」
俺は社会人、春は大学生のアルバイト。
体力の差というものがある。春は性欲が強い。
それに俺のマンションに居候…というか同棲中で、セックスは週1というルールが守れないのなら家賃は全額春が払うという約束で暮らしている。
「私のオナニー観てもらうだけでもダメなのぉ…?」
「…ダメ。俺は今日中に資料を完成させないといけないんだ。…自分の部屋でどうぞごゆっくりー」
無理やり春の部屋まで押し込み、ドアを閉めた。
*****
春の身体は男だが、趣味趣向は女性だと思う。俺の前では完全にオネェ口調だし、可愛いものが大好きな人だ。パンツだけではなく、高価なロリィタ服やクマやウサギのぬいぐるみにも囲まれている。
子供のころは着せ替え人形に可愛い服を着せて自己投影をしていたということ、
そういった大切な可愛いものの手入れもしっかりしているのも知っている。
パンツはすべて手洗いで衣装ケースに色ごとに綺麗に畳んで仕舞っているし、
ピンクのフリフリから真っ赤でセクシーなパンツまで種類豊富だ。
それを春の口から聞いたときは驚いた、という言葉だけでは表現しきれなかったが、すでに僕は春に恋をしていた。
*****
「おっはよーん!」
朝6時、俺の目覚まし時計が鳴る30分も前に身体を揺さぶられ、起こされた。
「うーん…朝から元気だなぁ…」
「起きた? じゃあ、エッチしよ?」
「…は?」
「今日は金曜日ー!」
…いや、ちょっと待ってくれ。確かに今日は金曜日だ。
だけど朝…寝起き一番でセックスとは勘弁してほしい。
春は目を輝かせながらパジャマのボタンに手をかけ始める。
「ちょ、ちょっと待って、確かに今日は金曜日だけど朝からは勘弁してくれ」
ボタンを外し始める手を跳ねのける。
「えぇーん! なぁんでぇ?」
「今日は大事なプレゼンの日なの! 帰ったらね!」
少し乱暴というか、大きめの声で言い聞かせる。
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