今夜、義弟に犯されます (Page 2)
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圭人と純一が肉体関係を持っていたのはもう三年も前のことだ。
それは恋愛などではなく、いわゆる援助交際にあたり、売り手である圭人は当時まだ十七歳の高校生で二十歳と偽っていた。
買い手である純一は二十五歳の新社会人だった。
自身が同性愛者であることを自覚したばかりな上に厄介な性癖を持つ純一は、一時的にでも性欲が満たせるのであれば誰でもいいと、ある条件とともにSNS上の同性愛者のコミュニティで募集をかけた。
冷やかしも含めた多数の応募者の中で目に留まったのが、圭人だった。
圭人と初めて顔を合わせたときに抱いた印象は今でもはっきりと覚えている。
二十歳にしてはやけに幼いとは感じていた。
しかし、写真で見た通りの中性的な面持ちに凛とした眼差し、やや低めながらも滑舌よく澄んだ声を持つ彼に惹かれ、深くは追及しなかった。
「あれ書き込んだの、本当にあんた?」
童顔で、よく真面目を絵に描いたようだと揶揄(やゆ)される容姿を持つ純一を見て、圭人もまた首を傾げて言った。
純一は頷き、「優しくしなくていい、強引に責めてほしい」と、SNSに書き込んだ通りの条件を告げた。
「…わかった」
同意を得て、二人はひと夏の愛人契約を結んだ。
週に二回、純一が指定したホテルで落ち合い性交渉に及ぶ。
詮索はせずに、必要以上の会話もなく、最初に交わした約束通りに顔を合わせるなり乱暴に服を剥いで犯すだけ――。
休憩時間いっぱいにまぐわったのちに、約束の金額を渡し別々にホテルを出る。
後腐れもない、たったそれだけの関係だった。
厳格な家庭で生まれ育ち、学生時代は常に品行方正で誰もが真面目と判を押す。
そんな純一が勇気を出して味わった、ひと夏の非日常。
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圭人との関係を解消してからの純一は気を改め、同性愛者である自分を押し込めて何の変哲もない日常を過ごしていた。
二年前に不思議と惹かれた同僚の女性と交際を開始、昇進を機に結婚を決めた。
彼女と過ごすうちに鳴りを潜めた裏の顔――順風満帆と思えた純一の日常に不穏が漂い始めたのは、あろうことか人生の晴れ舞台、結婚式の当日だった。
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