今夜、義弟に犯されます (Page 3)
それが三ヶ月前の出来事だ。
彼女に弟がいるのは知っていたが、それまでに一度も会ったことはなかった。
元より奔放(ほんぽう)で、県外の大学に進学し一人暮らしを始めてからは実家に寄り付きもしないのだと彼女から説明は受けていた。
式の直前に行われた親族紹介の場で、純一は彼女側の親族席に座る圭人を見つけた。
まさか――と、我が目を疑った。
あの頃よりも伸びた背丈に大人びた風貌――他人の空似であると思いたかった。
けれど、声を聞いた瞬間に間違いなく彼であると、確信を持った。
彼の本当の名前と年齢を知ると同時に記憶の奥底にしまっていた、あのひと夏がよみがえる。
そして、圭人もまた新郎として挨拶をする純一を凝視していた。
――他言無用――交わした契約に含んでいた一文。
それが功を奏してか、それとも終わったことだと割り切ってか、互いに接触はせずに、一定の距離を保ったまま式も披露宴もとどこおりなく進行した。
披露宴の最後、ゲストの見送りのために会場の外でこの日妻となった彼女と腕を組んで並び立つ。
そんな純一の横を圭人は一瞥(いちべつ)もくれずに素通りして去って行った。
その後、挨拶する間もなく彼はすぐ県外の自宅に戻って行き、純一も翌日には新婚旅行に旅立ち、以降は顔を合わせる機会もないままで――。
それとなく妻に探りをいれた際、妻はため息交じりに、「圭人は昔から愛想がなくて、なに考えてるんだか…」と愚痴をこぼしていた。
妻の両親の様子を見ても別段変わったところもなく、すべてなかったことにして終わるのかとばかり思っていた矢先のこと――。
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