君と×××がしたくて
過去にトラウマがあり、セックスができない蓮(れん)と同棲中の夏樹(なつき)。夏樹はそれでもいいといってくれたが、ある日女性とセックスをしているところを目撃してしまう。嫌われたくないという一心で努力をしてみたが――。
「…どうしたの?」
夏樹はすごく優しい。
一緒に朝を迎えたベッドで泣きわめく僕を後ろから優しく抱き締めてくれた。
「…夏樹が僕の前から居なくなっちゃう夢を見たの」
「それはどうして?」
その問いにはどうしても答えられなかった。
夢の中で言われたことがふたたび頭をよぎり、また涙が溢れて止まらない。
「ああ…言いたくないならそれでいいよ? でも現実世界の俺は居なくなったりしないからね?」
でもそれは嘘としか思えなかった。
*****
…僕はセックスができない。
それは身体的な理由もあるが、過去のトラウマの方が大きい。
怖いのだ。
快楽よりも恐怖の方が強く、セックスしようとしたら失神してしまったこともあるくらいだ。
でも夏樹のことが大好き。
だからこそ夏樹とセックスしたい。
…だからすごく辛い。
夏樹はこんな事情も含めて愛してる、と言ってくれた。セックスがすべてじゃない、とも。
…でも僕は知っている。
夏樹は浮気をしているということを。
*****
仕事が予定よりかなり早く終わって同棲しているマンションへと、途中で買ったデパ地下のプリンをふたつ下げてうきうき気分で帰宅したことがあった。
いつもならきちんと玄関の鍵は閉まっているはずなのにその日に限って鍵が開いていて不審に思ったが、そういう日もあるか、と気にも止めなかった。
靴を脱いで部屋の中へと足を進めると、かすかに女性の声が聞こえる。
社交的で友達が多いタイプだから友人でも招き入れたのだろうと思った。
玄関からリビングへと続くドアはかすかに開いていて、僕ははっきりと見てしまったのだ。
全裸の女性が跨がり、僕に背を向け、喘ぎ声を上げているところを。
それからどうしたのか覚えていないけど、車の中でぬるくなったプリンを素手で食べたことは覚えている。
…どうしてよりによって女の人とセックスするの?
男の人はみんなオナニーをするみたいだけど、夏樹はそれだけじゃダメなの?
オナニーしてるところ、何度も見ちゃったことあるよ?
朝方に僕が寝てると思って同じベッドの中でオナニーしてるのも知ってるよ?
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