王子アリスとその執事 〜麗しの秘め事〜
叔父の陰謀により、両親と兄達を殺されたアリス・カミーユ王子。叔父の目を欺くため、王女として暮らす日々。限られた中での生活と、叔父から性の対象に見られたアリスは極度の不安を感じていた。そんな彼を支えてくれるのは、幼い頃からいつも側にいてくれる執事のビューレイ。その熱い眼差しと広い胸で全てを受け止めてくれて…。
世界列強の一角を占める国、マローナ王国。
春には女神が訪れるかのように暖かく花が咲き乱れる、3000年の歴史を持つ大国。
この国を治めているのはカルバン王。
頭脳明晰で武芸にも秀で、民からも慕われていました。
国一番の美姫と謳われていたマルグリット妃と二人の息子とともに、幸せに暮らしていたのです。
しかし、それをよく思っていなかったのはカルバンの弟であるライオネル。
カルバンを毒殺し、二人の息子も不慮の事故に見せ掛けて殺してしまったのです。
夫と息子達を亡くしたマルグリットでしたが、彼女はその時カルバンの子を宿しておりました。
それを知ったライオネルは
「子が生まれたらすぐ知らせるように」
と家臣達に言い含め、子の誕生を待つのでした。
カルバンの死により、ライオネルが王位を継ぎました。
野心の強いライオネルは恐怖政治を行い、マローナ王国は他国を侵略する軍事国家となったのです。
そんな中、マルグリットが珠のような王子を産みます。
しかし、男の子だとばれてはライオネルに命を狙われてしまう。
そこで、産まれた子は女の子だったとライオネルに報せ、宮廷を出て別邸で育てることにしました。
他国を侵略するため戦争に夢中になってしまったライオネルも、生まれた子が女と知って放っておくのでした。
生まれた赤子はアリス・カミーユと名付けられ、乳母などの数少ない使用人達に育てられました。
月日は流れ、アリスはとても美しく成長しました。
母マルグリットにそっくりの端正な顔立ちに、王族の証である碧の瞳。
また、流れるような金の髪も彼の美しさを際立たせておりました。
彼の側にいるのはアリスの乳母の子であるビューレイ。長身で鍛えた体をもつ青年。
幼い頃からアリスと共に育ちましたが、今はこの屋敷の執事となって、彼の世話をしています。
「アリス様、おはようございます。今日のお召し物はいかがしましょう?」
気怠げな表情を浮かべ、ビューレイの声で目を覚ましたアリス。
彼が差し出したショコラを一口飲み、欠伸をしながらいつも通りの返事をします。
「君に任すよ」
「かしこまりました」
今日は宮廷に挨拶へ行く日。
ライオネルはアリスが謀反を起こさぬよう、月に一度宮廷に顔を出すように命じていたのです。
この「月に一度」が憂鬱であったアリス。
もぞもぞとベッドから這い出て、ビューレイに着替えさせてもらうのです。
着る服はもちろん女性用。
幼少の頃からの習慣もあり、華奢な体躯であるアリスには容易に着ることができるのです。
ドレスに着替え、髪も結い上げたアリスは、ビューレイと共に馬車に乗り宮廷へと向かうのでした。
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