王子アリスとその執事 〜麗しの秘め事〜 (Page 2)
宮廷では、ライオネルが大臣達と朝の会議を行なっておりました。
アリスも少し遅れて到着です。
「ライオネル国王陛下におかれましてはご機嫌麗しゅう…」
挨拶をしたアリスでしたが、ライオネルはその言葉を遮ります。
「おお、アリス・カミーユよ。出仕ご苦労。ますます美しくなった。亡き我が義姉上にそっくりである」
大臣達も口を揃えてアリスの麗しさを褒め称えます。
しかし、アリスは、自分の父と兄達を死に追いやった彼らと口を聞きたくないので、静かに微笑むだけです。
「年頃の姫が男の従者一人しかつけないというのは、如何なものか。義姉上の意思を尊重し、離れたアドリエンヌ邸で僅かな従者だけで過ごさせておったが、叔父である私としては変な虫がつかないか心配だ」
ライオネルのいやらしい目つきが気になるアリスは、目線を逸らします。
「陛下、私にはビューレイだけで十分です。このまま静かに過ごしたく存じます。」
ライオネルの言葉に精一杯の返事をします。
ライオネルは下卑た笑いで
「私がもう少し若ければ、其方を側室にするところだ」
と、アリスの体を舐め回すように見つめていきます。
アリスはその気味の悪さに絶句し、また、叔父の狙いが「女」の自分であることを察します。
「陛下、今日はこのあたりでお暇いたします」
やっと絞り出した返答で、アリスは俯きながらその場を早々に出るのでした。
アリスは無言で帰りの馬車に揺られていました。
外の景色を眺めながら、叔父が放った言葉を忘れようとしていたのです。
アリスの様子がおかしいことに気付いたビューレイは、あの叔父が何か下衆なことを言ったのだと察します。
何も聞かず、アリスの手をそっと握るのでした。
屋敷についても放心状態のアリス。
叔父の下品な笑いが心から離れないでいたのです。
また、自分の置かれた境遇にも不安が募るばかり…。
「僕はいつまで、叔父上に隠れて生きていなければいけないのだろう。叔父上だけじゃない。本当の自分を包み隠して、女の子の格好をして、これで本当に生きてるって言えるのだろうか」
いつになく落ち込み、目に涙を浮かべ話すアリスに、ビューレイは諭すように言うのです。
「皆、アリス様のお命を考えてのこと。亡くなられたお母上様もそれは…」
「みんな、僕の気持ちなんてわからないんだよ!」
込み上げてきた感情をビューレイにぶつけるアリス。
美しい碧の瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちています。
「いつ、殺されるかわからない毎日!こんなことがずっと続くのなら、いっそのこと…!」
そこへいきなり、ビューレイはアリスの唇を塞ぎました。
あまりのことにアリスは驚き、離れようとしますが、即座に強く抱きしめられ動くことができません。
ビューレイの力強さに為す術なくベッドに倒れ込んでしまいます。
「アリス様…どうか、そんなことは仰らないで」
アリスのはやまった言動を止めさせようと彼の上に乗ったビューレイ。
その真剣な眼差しに見つめられたアリスは、抵抗するのをやめます。
「幼少の頃より、あなただけをお守りして参りました。あなたの側にいたのも私だけです」
「僕は、叔父上が恐ろしい。叔父上に性の対象に見られて、本当に怖かったんだ…おぞましい…、怖い…」
今日、宮殿で感じたことをビューレイに告白したアリス。
怯えて震える彼に、ビューレイは耳元でそっと囁くのです。
「それは、あなたがとても美しいから。この髪も、その瞳も、愛らしい唇も、誰もが振り向くほどの容姿をお持ちだからです。」
「ビューレイ、そんな…こと…」
「でも、本当のあなたに恋い焦がれているのは、私だけです。あんな下衆な男に指一本触れさせたくない…!」
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