夢と目覚めた花 (Page 2)
四畳半の狭い和室で折り畳みテーブルを広げ、向かい合わせに座るとやけに目が笑っている秋斗に台本を手渡される。
…嫌な予感がした。
「これってBLじゃん…しかもエロいやつ…」
「同人なんてエロなしの方が珍しいって」
「それはわかってたけど…BLはなぁ…」
「選べる立場じゃないって」
「それは確かにそうだけど…」
今の養成所に合格して初めて講師に言われたことを思い出した。
「地上波では流せないようなアニメやゲームのキャラクターの声を当てることもある。どういうことかわかるか?」
わかってはいたが、いざ目の前にするとどうしても抵抗感が出てきてしまう。
「しかもこれ、秋斗と俺の掛け合い…ってことだよね?」
ざっと台本を読んだところ、付き合いたてのゲイカップルが初エッチをするという内容だった。
「…そういうことだね」
少し寒気がしてしまった。
それをごまかすように廃棄処分になったジャムパンのパッケージを破り、口にする。
…酸っぱい。
「秋斗は平気なの?」
「平気というか…仕事だから…でも大輔が戸惑うのはわかるよ?」
「うーん…」
「もしかして、そういう経験ないとか?」
突然そんなことを言われ、口にしていたジャムパンでひどくむせてしまった。
「げほっ! んなわけあるか! 俺、26歳だよ? うぇっ! げほっ! げほっ!」
「ご、ごめん…」
烏龍茶でむせてしまったジャムパンを流し込む。
「さ…さすがに男とはないけど、女の子とはそれなりに経験してるよ!」
少し気まずい空気が漂う中、秋斗は俺が持ってきたエクレアを口にしながら、
「なら、僕としてみる?」
…突然なにを言い出すんだこいつは。言葉が出てこない。
ニコニコと「全然食べられるのに捨てちゃうなんてもったいないね」と廃棄処分のエクレアを頬張る秋斗。
こんな状況で軽々しく僕とエッチしませんか?なんてどういう神経をしているんだ。
「ちょ、ちょっと待って。秋斗は男とそういうことしたことあるの?」
「ん? あるよ?」
まるで近所で大人気のラーメン屋に行ったことがあるか?という問いに答えたような口ぶりだ。
「ルームシェアしてたときにね、同居人がどっちもいける人だったんだよ、それでね…好奇心かな」
「えっ、それでしゃぶったりしたの?」
「したよ?」
男女のエッチだって好奇心で軽々しくするものではないのに、同性でそういったことをするなんて…
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