セクハラドクター
木野悟(きの さとる)は小さな診療所に勤めることが決まった。アットホームで安心していたが、スキンシップの激しいドクターの新涼(しんりょう)だけが気がかりだった。歓迎会で泥酔してしまった悟を新涼は家に連れて帰るが……
専門学校を出て地方の小さな診療所に就職が決まり、不安と緊張でいっぱいだったが蓋を開けてみると優しいナースの皆さんにちょっと適当なドクター。皆、仲がよくてアットホームな職場だった。だが、一つだけ気がかりなことが……
「あの、ドクター」
「んー?今日もいいお尻してるね」
「こらこら、先生。あんまりセクハラしてると出て行かれちゃいますよ」
「おっと、それは困る。せっかく来てくれた男性なんだから出て行かないでくれよ、悟くん」
ドクターからのちょっとしたセクハラ、というか激しいスキンシップに悩んでいた。おばさまナースの皆さんが止めてくれるのだが、未だに慣れずにあたふたとしている僕の反応を楽しんでいるのかもしれない。
ずっとこの診療所には女しかいなくて、男が来てくれてドクターも嬉しくて構っちゃうのだと聞いているので、そういうことなら少しくらいは仕方ないかと思っている。だが、勉学ばかりしてきた僕には、尻を撫でられたり、腰に手を回されたりとスキンシップでさえほとんど経験がなくていつも固まって緊張してしまう。いい加減慣れないととは思っているのだが……
その夜開催された酒の入った歓迎会で、ドクターのセクハラはいつも以上になっていた。だけど他の人たちも酒の席を楽しんでいて、この状況を止めてくれる人はいない。これを機に自分で何とかしないと。でもどうすれば……
ドクターはセクハラばっかりするし、適当なことばっかり言ってくるけど、やるときはやる男で患者からの信頼も厚い。それに緊急の処置が必要になったときには人が変わったかのように、テキパキと指示を出して完璧にこなすものだから尊敬はしている。自分もドクターのように患者から信頼されるような存在になりたいと思い始めていた。
難しいことを考えるのをやめようと酒を煽っているといつの間にか潰れていた。おぼろげな記憶の中でドクターが一緒にタクシーに乗せてくれて、どこかに着いて階段を上ったのは覚えている。
最近のコメント