ページをめくる細い指 (Page 3)

「お邪魔しまーす!」

「狭いけどゆっくりして」

「わっ!予想はしていたけどすごい本の数ですね!」

「まぁな、はい酎ハイここ置いとくよ?あと、上から二段目が小柳先生の本だから」

「ありがとうございます、さっそく読みますね」

「俺さっとシャワー入るから」

10分ぐらいで手早く終わらせて小柳先生を藤田に布教するつもりだったのに。

「寝てるし」

リビングに戻ると、テーブルには飲みかけのお酒が置かれたまま。

そのそばで、小柳先生の小説を手に持ったままスヤスヤと眠る藤田が。

まぁ今日は今までにないぐらい忙しかったからな…疲れたんだろう。

くてっと床に丸くなって寝ている姿は子犬そのものだ。

「起きろ~こんなところで寝るなって、まだ本も読んでないじゃん」

眉間にしわが寄ってぷくっと頬が膨らんでる…可愛い。

え?俺今可愛いって見とれてた!?いやいや子犬みたいに見えただけだ。

全然起きないし、邪魔だからとりあえずベットに寝かせておこう。

抱き上げたその軽さにびっくりした。

まじで子犬かよ…。

ベッドに寝かせて戻ろうとしたその後ろから

「野崎さん~一緒に寝ましょうよ~、一人は嫌なんです…」

「はぁ?一人で寝とけよ、寝ないなら起きろって」

「…ちょっとだけでもだめですか?」

なんだこいつ、そんなうるうるした目で見てくるなー!

くしゃくしゃになった髪にトロンとさせた眠そうな目、布団からひょこっり覗かせた小さな顔。

「はぁー少しだからな。ってか藤田ここで爆睡するなよ?」

「やったー!人肌恋しかったんですよね」

「んだよ、彼女ぐらいいるだろ?」

「いませんよ…ずっと好きな人はいますけど…」

「そうなんだ?あ、もしかして愛ちゃん!?いつも仲良さそうだもんな!」

愛ちゃんは同じ書店に勤めていて、気づくと藤田の側にいる可愛い雰囲気の女の子。

絶対に藤田を狙ってるんだよなぁ~。

「違います!…僕の好きな人は…さんです」

「ん?聞こえなかったけど?」

「野崎さんです!!!!!!!」

びっくりするぐらいバカでかい声で俺の名前を叫んできたんですけど…?

「は?なにいっっ…!???」

ガバっと覆いかぶさってきた藤田にキスされる。

「なにやっっって!んっ!」

藤田の舌が入ってくちゅくちゅと音が立つ。

潤んだ瞳で見降ろされた俺はなぜか動くことができなかった。

「…もう止まりません。野崎さんが好きです!っっ好きなんです」

そう言って藤田は俺の体を抱きしめ自分の方へ強く引き寄せた。

俺の方がはるかに体も大きいし力も強いはずなのに、こいつを引き離せない。

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