幼馴染の拗らせが転生しても治りません! (Page 2)

「ゆーき、このところ変だぜ?よそよそしい、つーか…もう1週間も一緒に帰ってねぇじゃん。昼も食堂にいねぇし…オレ、お前に嫌われるようなことした?」

あからさま過ぎただろうか。幼稚園で出会い、高校まで…登下校時も昼も必ず一緒だったのだから、様子がおかしいと言われても否定はできなかった。

「なんでオレを避けんの?ダメなトコあんなら、直すように努力するよ」

背後から力を込めて抱きしめられ、いつものように相手のアゴ下が俺の肩に乗せられる。気づけば指まで絡めとられていて、完全に動きを封じられていた。

これって、フツーの友人にすることだろうか――俺が勘違いしてしまうのも、無理はないだろう。

「だって秀斗、彼女ができたって言うからさ…邪魔しちゃ悪いなと思って」
「…ゆーきはオレに彼女ができたら、幼馴染の関係を解消するってこと?」

ちがう、そうじゃない。きっと他の奴らは友達に恋人ができたからといって、相手から遠ざかったりはしないだろう。それは俺だって理解している。おかしいのは“俺”なのだ――。

「好き…だから…」

このときの俺は、高熱を免罪符(めんざいふ)にして隠し続けていた気持ちを彼に打ち明けようとしていた。早く嫌われて、彼女のもとへ行ってくれと、自暴自棄(じぼうじき)になったのかもしれない。けれども秀斗はそんな俺の告白を受けて、口元をゆるませていた。

「ゆーきがオレのことを好き?やりぃ!」

ぷにぷにと頬を突っつかれて、何が起きているのかと思考が停止してしまう。

「オレ、幼稚園の頃からゆーきのことが好きだったんだ。でもお袋に『ゆーきと結婚したい!』って言ったら、それを人前で話しちゃいけませんってマジメに返されちゃって…。そりゃそうなんだろうけど…男のオレがお前を好きだなんてさ。この感情は気のせいだって思い込もうとしたけど、無理だったから…」

ありえない。秀斗がガキの頃から俺を好きだったなんて。

「オレばっかりゆーきのことが好きだってのに、ムカついて…告白されたってウソついたんだ。オレに彼女ができたら、お前はどんな反応すんのかなって…まさか高熱出して寝込むまで妬(や)くとは思ってなかったから…嬉しい」

俺はまんまと彼に騙(だま)されていたのだ。まったく、読めない男である。
しかし、妙に距離を近く感じたり、世話を焼いてくれる理由がこれではっきりとした。ついでに、誰にでも甘えてくるワケじゃないってことも。

「ゆーき、照れてんのか?顔、真っ赤だぞ」
「熱があるからに決まってんだろっ!もういい!全部自分でできるから、秀斗は出ていけ!!」

両想いだったなんてかえって気恥ずかしくて、彼の胸板をポカポカと叩く。
力の入りきらない手は、軽やかな笑いと共にすぐ止められ、唇を指でなぞられた。

「ゆーき、オレのファーストキス…もらってくれる?」
「ば、バカ!だからカゼうつ…んっ!」

38度超えの発熱者に何を言っているのかと慌てたのだが、秀斗は低い声で『上等だよ』とささやくと、こちらの返事を待たずにキスを落とした。

俺の心配は的中し、翌日になると秀斗も熱を上げ、2人して丸3日学校を休むハメとなったのである。

そして、このキスをした日を境(さかい)に俺たちは恋人としての新しい生活をスタートさせたのだ。

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