幼馴染の拗らせが転生しても治りません! (Page 3)
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「ゆーき、危ないッ!!」
キキィ――!!ドンッ!!!
爆発音のような音が後方で聞こえる。俺、一体どうしちゃったんだろうか。
「あ…れ…」
手を繋いで隣を歩いていた秀斗の姿が見えない。
「君、大丈夫か!?」
それは駅前のショッピングモールへと向かう道中の出来事だった。
20歳になった俺たちは、付き合っていることを親に隠しながらもデートを繰り返し、愛を深め合っていたのだが…どこかで“幼馴染”の感覚が抜けず、抱きしめ合ったり、キスしたりするだけの幼稚な関係でしかない。
だとしても、隣に彼がいるだけで幸せだった。
「しゅーと…?」
大勢のヤジ馬に囲まれていたのは、地べたに横たわる秀斗だった。身体中が擦り切れ、額や口の端からは血が流れているのが見える。
「誰か救急車を!!」
「どなたかお医者さんはいらっしゃいませんか!?」
「この子、息をしていないぞ!!」
その場は騒然としていて、何人もの人たちが俺や秀斗、事故を起こした運転手を取り囲んでいた。
(秀斗、俺をかばって車に…!?)
働かない頭で、秀斗に突き飛ばされた際に痛めた足を引きずりながらも彼の傍(そば)へと近寄る。
俺と秀斗は高校卒業後、看護大学の学生になっていた。
今、こいつを救えるのは俺しかいない。
(脈がない…!?)
傷だらけの身体に触れて呆然(ぼうぜん)とする。呼吸も脈も何もかも止まり、ぴくりとも反応がないのだ。
(し、心臓マッサージ!!)
救急隊が到着するまで何とかしなければと、胸骨圧迫(きょうこつあっぱく)のため、体重を掛けようとするのだが、うまくいかない。
(なんでだよ…秀斗!秀斗!!お願い、死ぬなっ…!俺だけ助かってどうすんだよ!!)
涙で視界はかすみ、腕に力が入らない。素早く押し込まなければ彼は死んでしまうというのに――意味のない俺の行為じゃ、彼は救えない。
「君、どきなさいッ!処置のジャマだ!!」
偶然通りかかった現役の看護師が飛び込んできて、ただ無事を祈るしかない無力な自分がやるせなかった。
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秀斗は即死に近い状態で、懸命な治療を受けても息を吹き返すことはなかった。
彼の母親は半狂乱(はんきょうらん)となり、『なんでウチの子だけ…』と俺を責めていたし、俺の母さんは母さんで、憔悴(しょうすい)しきっていた。それはそうだ。
息子を助けた代わりに、成人したばかりの友人が死んでしまったのだから――。予期せぬ車の暴走事故は、俺たち家族の仲をも切り裂いたかのように感じた。
(学校であんなに練習したってのに、なんであのとき、落ち着いて救命処置を行えなかったんだ…俺が真っ先に秀斗に駆け寄って…ちゃんと処置できていれば…)
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